電車に乗って
家に還る夢を
なぜだかわからないが
何度も見るようになった

その夢は見るたびに
情景が違っていて

空にあるのは
下界の愚かさを
せせら笑うような
上弦の月だったり

タングステンのように
不遜なほど鈍重な
沈み込む雲だったり

海に崩れ落ちた
氷河の脇腹のような
空だったりするが

電車の中は
いつもいつも

老人達が無言のまま座っていたり
子供がふざけて遊んでいたり
座面の布が切り裂かれていたり
食べ物がこぼされていたりして

座れる場所が
なかなか見つからない

そんな電車は走り続ける
走り続けてどこにも停まらない
どこへ行くかもよくわからない
いつまでたっても到着しない

なぜそんな電車に
立ち尽くしたまま
乗っているのだろう
家に還ろうとしているのに

遠い遠い記憶の彼方に佇む
懐かしい家には
夢の電車に乗っても
なかなか還り着かない

遥かなる故郷への帰路
微かな薫りを感じながらも
いまだ終着駅は見えなかった