私はいつか
いなくなる
遠く過ぎ去った光を
眼前に観ていた人々が
そうだったように
私もいつの日か
消えてなくなる
己が存在した
いくばくかの痕跡を
残そうとして
言葉を発しても
それは口を離れた瞬間
気圏に拡散して
あえなく消滅してしまう
それを防ぐため
紙の上に記しても
電子の媒体に託しても
そこに刻まれた言葉は
いつかは訪れる
分解と散逸という
物質の負う宿命を
逃れることはできない
この儚い肉体と同じように
畢竟
言葉は残らない
ほんの刹那のもの
それが
「ことば」ではなく
「言葉」である限り
たとえば
「命」と「いのち」が
異なるように
「命」は外側の面であるが
「いのち」とは内側の奥深く
ーー光の届かぬ海底を
流れ行く潮流のようにーー
全てとつながっているもの
それと同じように
「言葉」はただのラベルだが
「ことば」は内側の奥深く
ーー形なき魂の源流へと
我らを導くかのようにーー
全てとつながるものだから
「言葉」は時間を有せず
何の力をも持たないが
ひとつの「言葉」が
「ことば」へと変わる時
ーー痛みと歓びを
分かち合うとき
共鳴するとき
そして
深く沈降するときーー
それらのときが
己が存在を振り返らせ
ウロボロスの如く
言葉は言葉自身に飲み込まれ
それは溶融して
「ことば」へと転生する
芋虫が硬い蛹を経て
美しい蝶へと
生まれ変わるように
その「ことば」により
過去から未来へと続く
一本の道がそこに貫かれ
力が未来へと伝えられる
それは遥かな空の彼方
霞む永遠へと続く
決して消えることのない
一条の飛行機雲
私はいつか
※※必ず※※
居なくなる
この限られた命が
大きなるいのちの
小さな一片であって
そこへ還ってゆくように
己の発した言葉が
全ての根源である
「ことば」への門を開き
過ぎ去った光を
未来へと投射する道を
ー叶うならばー
拓いてみたい
✢✢詩集「ウロボロスの夢」を読んで✢✢