時の岬の突端に
今私は佇んで
深遠なる海の流れに
耳を傾けています
群青を背負った空から
舞い落ちてくる
ひとひらの雪は
ー無音は重さを
担うでしょうかー
海に己が身を融かして
その脆い体に
背負いきれない
冥い罪の欠片を
やっと解きほぐして
ー解体される重荷の
乾いた落葉は砕けますかー
淡い歓びの歌を
唄っています
深海に沈みゆく
マリンスノウの
賢明なる定めには
潮に溶け込んだ
雪の重荷であった
罪の塩が結晶化して
きらきらと
―さめざめと
ほろほろとー
きらめいています
数多のきらめきを運ぶ
深海の流れは
時の岬を巡る天の川
その川が奏でる調べには
時計の針を遡らせる
儚い願いが織り込まれていて
遥かな波の下を回遊する
哀しみの魚たちは
その願いを呼吸して
ーその身体に巡る血潮は
夢を見ることを許しますかー
留まることは死を意味すると
そんな遠い記憶の切片を
己に投影しているのです
やがては振り積もる
白いマリンスノウに
埋もれゆく宿命を
誰もが負っていても
深海の奏でる旋律は
変わることも
止むこともなく
結晶化した罪の塩の
ーろうそくの炎が消える間際の
虚空の星がその一生を終える際のー
あえかなきらめきは
消えることも
滲むこともありません
群青を背負った空のもと
時の岬に佇む私は
不変なる
普遍なる調べに
震える耳を傾け続けて
哀しみの魚たちの涙を
己がまなこから落としつつ
ー憑依された哀しみは
風に乗って旅立ちましたー
その雫がひとひらの雪となり
沈みゆくマリンスノウのまとう
賢明さに届くことを
独り祈っているのです