いかなる生命をも
拒むかのような
吹きすさぶ強い風と
乾燥の大地を
鋭く抉るかの如く
深い渓谷が蛇行する

久遠の時を経て
流水に刻み込まれた
その谷底にだけ緑が残る
大いなる旅路の末に
辿り着いた終着点

その深く切り立った
渓谷の岩壁に開いた洞窟に
数多残された手形

大航海の時代
冷酷な侵略者に
滅ぼされてしまった
民族の痕跡

過酷なこの地でも
アルマジロが這い回り
グアナコが駆け抜け
その民は何千年もの間
生き延びてきた

そう
生き延びること
それこそが大いなる旅路の
原動力であり
その生存の証が
数多残された手形なのだ

無慈悲な侵略者に
悠久の記憶を
断ち切られてしまった人々

そして今
洞窟に残された
無数の手形のみが
守るべきものとされ
保全されている

手遅れの措置
消え去ってしまった者は
もう二度と戻ってはこない

吹きすさぶ風と
乾燥の大地よりも
過酷だったのは
文明という名の
狂気だったのかもしれない

数多残された手形は
そのことを
我らに伝えようと
訴えかけようとするかの如く
洞窟の岩肌を埋め尽くしていた

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世界遺産である
ピントゥーラス川の
クエバ・デ・ラス・マノスにある
先住民族の手形より
インスピレーションを得て書いた詩です