若い頃観た映画の
ダークヒーローが
語ったセリフを思い出す

 私は誰でもあり誰でもない
 どこにでもいてどこにもいない

何十年も前のことなのに
昨日聞いたかのように
鮮明に思い出す

でもそれは時を経て
翳を背負い人目を避ける
ダークヒーローの
言葉ではなくなり

私を見守る何ものかの
声なき言葉へと昇華した

そうしてセリフの
順番は入れ替わり

 私は誰でもなく誰でもある
 どこにもいなくどこにでもいる

と そんなふうに
見えない存在の力が刻む
波紋の如き言葉へと
変わったのである

時を経て
何かを切に求める心が
水を芳醇なぶどう酒へと
変えるように