晩秋を貫く
早朝の通勤電車

その寂しい窓際に
鮮やかな緑色を纏った
カメムシの骸が
ひとつ転がっていた

六本のか細い脚を
固く折りたたんで

僅かに丸みを帯びた
背を下にして
仰向けにひっくり返った
その骸は

電車が揺れるたび
微小な揺りかごのように
小刻みにユラユラと
揺らめいて

一寸もないような
小さな虫だが
五分と言わずとも
ニ分くらいの魂は
あっただろうか

そのあえかな魂は
小さな小さな
揺りかごに揺られて
寂しい窓際で
静かに眠り続けていた