眠りゆくカメムシ晩秋を貫 く早朝の通勤電車その寂しい窓際に鮮やかな緑色を纏ったカメムシの骸がひとつ転がっていた六本のか細い脚を固く折りたたんで僅かに丸みを帯びた背を下にして仰向けにひっくり返ったその骸は電車が揺れるたび微小な揺りかごのように小刻みにユラユラと揺らめいて一寸もないような小さな虫だが五分と言わずともニ分くらいの魂はあっただろうかそのあえかな魂は小さな小さな揺りかごに揺られて寂しい窓際で静かに眠り続けていた