また
奇妙な夢を見た
旅行先で
懐かしい人に再会した
その人とはもう何十年も
会っていなかった
でも夢の中のその人は
暗く沈んだ表情をして
話しかけても言葉少なかった
それでも
しばらくして
別れるとき私に一言
「ライターをありがとう」
と言った
その人に
ライターを渡した覚えはない
私は煙草は吸わないので
普段からライターを
持ち歩かないから
ライターを渡せるはずもない
ライターとは
灯火を点すもの
夢とは
思い出に灯火を
点すことなのかもしれない
夢中のその人は
現実に生きている
その人ではなく
思い出の中のその人だから
自分の思い出に
灯火を灯してくれて
「ありがとう」と
言ったのかもしれない
その人はどこか遠くへと
旅立とうとしている様子だった
ライターには
「はしけ」という意味もある
はしけとは
人や荷物を運ぶために
大きな船と陸との間を
行き来するもの
もしかしたら夢とは
思い出の旅立ちのための
「はしけ」なのかもしれない
思い出のあの人とは
もう会えないのだろうか
いつの日か
また会えるときが来るだろうか
今になってなぜそんな夢を
見たのかわからない
それでも
あの人と再会した夢の
懐かしくも切ない感覚を
いつまでも忘れないでいたい