朧朧たる霧雨の
ベールを被る叢に
一輪だけ咲く
紫露草

淡い紫を顕す
三枚の花弁は
何も語らず

ただじっと
虚空を見つめて
何かを待っているかのよう

待っているのは
訪う羽虫か
慈愛の眼差しか
過ぎ去った日々か

微細な水滴を纏った
儚く薄い花弁は
心の時を止める
遡行への時計

紫露草よ
おまえの花弁もまた
時の定めには
抗えぬが

その淡い紫を顕す
刹那の如き僅かな間は
心の遡行をいざなう
小さき門であれ

紫露草
烟雨に開いた
追憶の灯火