人は境界に
囲まれている
数多の種類の
境界に縁取られている

それらの境界とは
即ち差違である
量的な差であり
質的な違いである

我々の輪郭は
差違という境界である
差違であるからには
そこには常に比較がある

心の平安のためには
他人との比較をするなと
世の人は言う

しかし
比較をしなければ
私は私でいられない
私が私で在ることを
顕せない

画家が輪郭や色彩や
陰影を描かなければ
いかなる絵も
生まれることはない

彫刻家が特定の形を
造らなければ
ただ木片や粘土の塊が
あるだけである

差違を認めず
境界があやふやになれば
私を縁取る輪郭は
グラデーションと化し
私という存在も
朦朧となってゆく

比較をしなければ
私は私を認識できない
私は私という存在を
保持できない

だから
比較はしていいのである
ただしその場その時で
その比較の結果を
受け入れなければならない

映画のフィルムの
一コマ一コマが
己が身に光を透すことを
拒んだならば
銀幕には何も映らず
物語は生まれないのだから