この世をば
我が世とぞ思ふ
望月の
欠けたることも
無しと思へば
広く知られた
藤原道長の歌である
古来 この歌は
自らの栄華を誇る歌
であるとする解釈のほか
后となった娘のこととか
今夜は本当にいい夜だ
程度の意味だとか
様々な解釈がなされてきた
しかし
欠けたるところのない
全くの満月は
一晩限りのものである
その欠けたることもなき
月光に照らされた
夜の世界の美とは
一瞬の中にこそ充溢する
永遠のことではないだろうか
永遠とは
長大な時間の流れ
のことではない
それは時の流れを
超越した何か
言葉による表現をも
超えた何かであり
それ故に
普段の人の意識をも
超克したものでもあるのだ
そこでは
望月と夜と世界とは
決して分かつことなく
全くひとつとなっている
そんな瞬間の尊さが
歌というものの
生命でもある
それは言葉を超えた美を
言葉によって
捉えようとするが故の
言葉が古い己を脱ぎ捨て
まばゆい蝶の如く
生まれ変わろうとする
生命の躍動なのだ