そのジャーナリストは
とても優秀であった
入念な事実確認による
正確さと
多角的な観点による
公正さとの
両者を兼ね備えていた
しかし
その祖国が
戦争へと突入すると
激しい戦火がもたらす
破壊と暴力の中
ジャーナリストは
死んでしまった
そして
新たに兵士が生まれた
その兵士の武器は
銃でも戦車でも
戦闘機でもなかった
その兵士の武器は
ペンとメディアであった
そしてその武器により
友軍を
同胞を
鼓舞し団結させ
敵への憎悪を煽るのであった
もはやその国では
ジャーナリストは
みな死に絶えてしまい
新たに生まれた兵士に
取って代わられた
もはやその国では
公正な報道は姿を消し
疑うことを許されぬ
プロパガンダに
取って代わられた
優秀なジャーナリストは
生きながらにして
死んでしまった
そして生まれ変わった
新たな兵士により
その国のジャーナリズムは
絶滅してしまった
でもその国がことさら
特別なわけではなかった
それは
過去に幾度となく
繰り返されてきたことで
歴史を学んだものなら
誰もが皆
知っているはずのことであった
それなのに
ジャーナリストの死は
ジャーナリズムの絶滅は
ここでも避けられなかった
それは
人間の限界の顕れであった
深く根を張った頑強な憎悪へ
理性の揚げた白旗であった