花はいつも
過去を咲かせている
過ぎ去った時を
背負っている
その色や形
造形のすべてに
過去の勲章を宿して
その授けられた勲章は
自然の摂理を映している
それは永い永い年月を経た
数限りない糸である
それらの糸の一本一本に
撚り合わされているものは
諸々の死である
無数の試行錯誤の内に
選ばれなかったものたちの
消えて逝った生である
それら喪われた生は礎である
それは記憶であり
輝く芽生えであり
冷徹なる遷移であり
新たな展開への望みであり
行き詰まる道程であり
豊穣への蓄積であり
枯渇への零落であり
病であり
滅びであり
再生でもある
繰り返されるその再生が
花に過去を担わせる
今という時との
秘められた一瞬の邂逅
そこに過ぎ去った色形が
開いてゆく