駅前広場の街路樹が
悄然と立ち尽くしている

その根元のすぐ近くまで
コンクリートで覆われ
土に染み込む雨の恵み少なく

太い枝も遠慮なく
あらかた切り落とされ
無様な格好になり下がっている

しかし人よ
刮目して観よ

虐げられてもなお懸命に
新たな芽を出そうとする
街路樹の姿は

深い哀しみの中に在りながらも
なお生き続けようとする
より大きく成長しようとする
根源的な意思の顕現

土の大地が殆んど失われた
この街に在っても
何故自分はここにいるのか
何のために生きているのか
そんな問いを
ひと欠片も持つことなく
沈黙の内に立つ街路樹は

強靭なる生命の意思を
廓然と顕現し続けている

道行く人よ
瞠目せよ
この街路樹の顕す力を

悠久の時を経て受け継がれた
一片の曇りなき清明なる意思を

希望も絶望をも遥かに超えた
今この瞬間のみに生きる輝きを