文月の夕焼けの空を
横切って飛ぶ烏の軌跡は
年に一度の会瀬を導く
水先案内

夕闇の中を光速で飛び抜ける
ムクドリ達は
雨雲にぶつかって
舞い落ちる幾片もの羽根となり
川に沈む

星屑の川底から時の骸が見上げる
彦星を乗せた舟は
空に浮かぶ飛行船のように
川面を滑ってゆく

赤い月に照らされたペンギンは
星屑の川を渡る舟に
自由に天を翔た
太古の祖先達の残像を観る

煌めく川の両岸では
機は止まり
牛は眠り
そしてこの地では
濁った音や光は凍りつき
夜に蠢く猫や鼠も
じっと空を見上げ
サボテンの花だけが
ゆっくりと開いてゆく

古い神社に住まう大きな楠の
こんもりとした梢に流れ落ちる
星の川の下
その夜だけは
山も草木も
獣も人も息をひそめ
光の川を渡る慕情を見送る

苦い水が流れるこの世界が見る
一夜限りの硝子の夢