【Alox】 『第三の眼 ~看破する力~』 http://alox.jp/ vol.36
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◆ 目 次 ◆
【1】 今号の一言 『銀行は支援しない ~ 年初から上場企業が倒産 ~』
【2】 本文 『今年の倒産を予測する - 2019年 -』
【3】 検証 『今年の倒産を予測する - 2018年 - 予測精度検証』
【4】 編集後記 『“惑わず”の年』
──────────────────────────────
【1】 銀行は支援しない ~ 年初から上場企業が倒産 ~
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今年は、上場企業の倒産によって幕が明けた。
[会社名] 株式会社シベール
[市場] ジャスダック
[証券コード] 2228
[倒産日] 2019年1月17日 民事再生法
[負債総額] 19億6298万円
[アラーム管理システムの格付評点]:23点
[アラーム管理システムの分析表1.8.貸借対照表グラフ]
http://alox.jp/dcms_media/other/cybele2018.pdf
本件は、「今後の企業評価は保守的にすべき」と示唆している。
倒産の原因は、「資金繰りに窮し、2019年1月18日の債務の弁済が難しいため」とある。
有価証券報告書を読み解くと、下記の事実が得られる。
社長:山形銀行出身(4年前からシベールで社長)
株主:山形銀行が大株主
メインバンク:山形銀行
当然、社長は山形銀行へ資金繰りの状況を伝え、融資依頼をしたが、断られた。
(参照元:日本経済新聞 2019年1月18日 『再生法申請のシベール、資金難で悪循環 銀行の支援に限界』)
おそらく、数年前ならば山形銀行も融資しただろう。
しかし、日本銀行がマイナス金利を導入後、地銀の収益は悪化の一途をたどっており、
融資先の選別は極めて保守的であり厳格となった。
つまり、今後は銀行の支援が期待できない。
昨年倒産した上場企業の日本海洋掘削も資金調達に失敗しており、今後も同様のケースが
起こるのは間違いなく、それは上場企業に限られないのは言わずもがなである。
それでは、年初恒例の「今年の倒産を予測する」をお楽しみください。
★PR★*…..*…..*…..*…..*…..*…..*…
決算書分析は、長年の実績に裏打ちされた
『アラーム管理システムで』と『格付情報』をご利用ください。
サンプル分析やトライアル受付中!
▽詳細はこちら▽
アラーム管理システム
http://alox.jp/product/alarm.h
格付情報
http://alox.jp/product/rating.
※ご要望に応じたご提案をさせて頂きます。
まずはお話をお聞かせください。
*…..*…..*…..*…..*…..*…..*…..*…
──────────────────────────────
【2】 今年の倒産を予測する - 2019年 -
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
例年通り、2018年の倒産動向を振り返り、2019年の倒産に
【2018年の倒産件数(上場企業)】
倒産件数:1社〔2017年:2社〕 <前年比0.5倍>
直近10年間の上場企業の倒産件数と日経平均株価の推移は、下記の通りである。
西暦 日経平均株価【大納会終値】 上場倒産件数
2009年 10,546 20
2010年 10,228 10
2011年 8,455 4
2012年 10,395 6
2013年 16,291 3
2014年 17,450 0
2015年 19,033 3
2016年 19,114 0
2017年 22,765 2
2018年 20,015 1
≪上場企業の倒産件数と大納会終値の棒グラフ≫

http://alox.jp/dcms_media/other/190118_stockkensuu.pdf

http://alox.jp/dcms_media/othe
昨年の上場企業の倒産は、日本海洋掘削【東証1部】のみである。
倒産のカテゴリーには含まれないが、田淵電機【東証1部】が事業
申請したことは付記しておく。
【2018年の倒産件数(全企業)】
倒産件数:8,235社 〔2017年:8,405社〕 <前年比0.98倍>
負債総額:1兆4,854億円 〔2017年:3兆1,676億円〕 <前年比0.47倍>
全企業の倒産件数は、5年連続で10,000件以下である。
昨年と同様に、今年もほぼ前年と同じ件数であり、倒産件数は“底
≪2009年~2018年倒産件数(全企業と上場企業)の棒グラ

http://alox.jp/dcms_media/othe
【今年は?】
上場企業、全企業の倒産件数は増加する。
【重大イベントカレンダー】
今年の政治経済にインパクトがあるイベントを列挙した。
このイベント情報等を踏まえて、倒産件数に影響のある要因を
〔ネガティブ〕と〔ポジティブ〕に分けて、記載する。
時期 イベント
2月末日 米中の貿易戦争の「一時休戦」期限
3月29日 英国のEU離脱【Brexit】
4月30日 天皇退位
5月1日 新天皇即位、元号改正
05月 欧州議会選挙
4月1日 働き方改革関連法案の施行
4月 統一地方選
7月 参議院選挙
5月23日 欧州議会選挙
6月7日 FIFA女子ワールドカップ
6月28日 G20in大阪
9月20日 ラグビーワールドカップ日本大会
10月1日 消費税増税(8%→10%)
10月31日 ドラギECB総裁の任期終了
〔ネガティブ要因〕
(1)隠れ不良債権の顕在化
昨年の日本海洋掘削、今年のシベールのように、
上場企業にさえ、銀行は支援する余力がなくなっている。
何が原因で、銀行の体力を削いでいるのであろうか?
つまり、収益を圧迫する要因は何か?
それは、不良債権の増加である。
一般社団法人全国地方銀行協会によると、不良債権処理額の増加に
地方銀行の経常利益は-26.4%(-1,752億円)となった
(参照元:一般社団法人全国地方銀行協会
地方銀行2018年度中間決算の概要(2018年12月12日公
https://www.chiginkyo.or.jp/ap
それでは、なぜ不良債権が増えたのか?
それは、悪法として著名な中小企業金融円滑化法(モラトリアム法
本法の実施と同時に、金融庁の政策方針は転換された。
極端に言えば、借入金の返済の延期(リスケ)を依頼する企業を
破綻懸念先へ格付変更する必要がなく、貸倒引当金を計上する必要
金融機関は、リスケの申し込みをほとんど受け入れた。
その実行率は90%以上である。
しかし、時代が変わった。
人口減少、少子高齢化、日本銀行のマイナス金利で体力は削がれ、
金融機関の合従連衡が日常茶飯事となった。
そして、金融機関は融資先の選別を中小企業金融円滑化法(モラト
施行前の水準に戻しつつある。
その結果が日本海洋掘削であり、シベールの倒産である。
中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)を利用した企業は、約4
これらの企業は、延命しているだけであり、経営改善がなされるケ
40万社の倒産予備軍は、キッカケがあれば、「ドバッ」と倒産す
今年は、そのキッカケとなりうる事象に事欠かない。
(2)米中の新冷戦
2019年1月17日、日本電産は2019年3月期の業績予想の
同日の会見において、日本電産の永守会長は、
「これまでの長い経営経験でも見たことがないほどの落ち込みだ」
売上が急減していることを明かした。
米中の貿易摩擦によって、中国経済はトランプ大統領によって「急
日本企業にも甚大な影響をもたらし、日本電産には直撃した。
米国は中国に対して、対米貿易黒字だけではなく、知的財産権の侵
技術移転の強要に対する是正を求めている。
多くの米国人は、ペンス米副大統領が演説にある通り、中国のこと
「50年近く米国をだまして技術や資金をもらい、覇権国の地位を
これらの対中国政策は、米国において支持を得ており、この新冷戦
日本でも、中国経済の急減速により、日本電産に限らず、2019
下方修正する企業が出てくるだろう。
中国に部品を供給する日本の製造業への影響は、甚大である。
現役で伝説級の経営者と言うべき日本電産の永守会長は、
2018年11月~12月の売上が3割落ちたのを踏まえ、
「これがさらに落ち込めばリーマンショックの時と同じだと見る必
2月末日には、米中貿易戦争の「一時休戦」期限が切れる。
再度、米国が関税等の追加措置を実行すれば、中国は報復する。
この繰り返しが続くほどに、リーマンショック並の危機が訪れる可
(3)個別企業の経済活動における国家の関与
米国のトランプ大統領は、米国の国益のため、個別企業の経済活動
名指しで個別企業を攻撃することも多い。
ルノーの株主として有名なフランスは、
株主の立場から、民間企業の経営に直接関与している。
反グローバル化とともに、各国が露骨に自国の企業へ有利なルール
政策を実行している。
日本政府は、「民間ことは民間で解決するという立場」を崩してい
日産自動車の経営権争いのように、フランス政府が露骨なまでにル
関与している中で、自国の自動車メーカーに対して何らアクション
お人好しにも程がある。
米国の貿易赤字は、中国、メキシコ、日本がトップ3である。
米中はすでに冷戦であり、米国とメキシコも壁を構築する云々に
端を発して関係が悪化した。
日本は、トランプ大統領からの攻撃はやや緩やかだが、自動車関係を
中心に取引(ディール)を求められる可能性は高い。
トランプ大統領に長期的な観点はなく、
極端な短期志向であるため、将来に禍根が残っても、一時的な成果
そのため、日本がターゲットとなる場合は、確実に痛みを伴う。
自動車関連の貿易で、譲歩を求められる可能性は極めて高い。
(4)英国のEU離脱【Brexit】
最悪のシナリオは、英国がEUから「合意なき離脱」をすることだ
さすがに、それは発生しないと思われるが、それを望む人も一部お
現状は、2018年11月に合意した内容について、英国・EU共
いずれにしろ、2019年3月30日の期限(期限延長の可能性も
「合意なき離脱」が発生した場合は、マーケットの混乱は避けられ
一方、EUはEUで試練を迎えている。
各国の強力な指導者の影響力が削がれており、まとまりを欠いてい
ドイツでは、メルケル首相が遅くとも2021年の任期満了で首相
キリスト教民主同盟の党首の辞任を表明した。
「EUの歴史に燦然と輝く巨星が落ちた」と表現しても、
全く大袈裟には感じない指導者が退任することの影響は大きい。
さらに、フランスでは、燃料税の引き上げ政策の反発をキッカケに
反政府デモ「黄色いベスト運動」によって、マクロン大統領の支持
2019年5月には欧州議会選挙、10月にはドラギECB総裁の
英国もEUも、安定という言葉とはほど遠い状況にある。
(5)消費税の増税
リーマンショック級の経済危機がない限り、
2019年10月1日には消費税が8%から10%となる。
政府は「増税前の駆け込み需要とその反動」を可能な限り抑えるた
軽減税率、ポイント還元、プレミアム付き商品券、住宅購入支援、
実施する予定である。
しかし、高額な製品・サービスの駆け込み需要は発生し、日用品の
百貨店やスーパーなど7月~9月にかけて、前年比数倍の売上とな
増税後の10月以降は、反動によって前年割れとなるのが必定だ。
前回の消費増税では、個人消費が前年比年率17%も下落し、
増税前の水準に戻るまでに4年の歳月を要している。
消費増税をキッカケにして大不況という可能性は、高い確率で起こ
(6)手詰まりの日銀
前日銀総裁の白川方明氏は、下記のように述べている。
「日本経済が直面している最大の問題は、高齢化、人口減という事
それが財政、社会保障、地域経済の持続可能性の問題として表れて
決して一時的なものではない。
当時、日銀が最も求められたのはマネタリーベース(通貨共有量)
たとえそれを行って一時的に圧力をかわしても、問題の解決につな
金融政策が財政の状況によって規定されてしまう財政支配という新
(参照元:週刊エコノミスト『日本経済総予測2019』特別イン
前日銀総裁の白川氏は、真意を説いている。
日本経済が直面している最大の問題は、高齢化、人口減という事態
金融緩和で糊口をしのいでも、問題解決にならないと述べている。
それを踏まえると、現状の日銀は緩和緩和でもう打つ手がない。
はっきり言えば、詰んでいる。
たった5年で日本銀行の総資産は、約160兆円から約550兆円
300兆円近くの国債や11兆円のETFを買い込んで、市中へお
2%のインフレにほほど遠い。
何らかの経済危機が起きた場合、今の日銀に出来ることは、
実効性のある政策は無く、「ご安心ください!」と叫ぶことぐらい
(7)GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)
アメリカではアマゾンの隆盛により、廃墟モールが続出した。
トヨタ自動車の豊田社長は、「私たちの競争相手はもはや自動車会
グーグルやアップルあるいはフェイスブックといった企業」と述べ
4社以外にも、マイクロソフトやオラクルなども含めた超IT企業
従来の製造業、小売業、運送業などの世界を侵食というより、
「破壊して創造」している。
トヨタ自動車のような危機感を持たない企業は、数年後に消えてい
〔ポジティブ!?要因〕
(1)働き方改革関連法案
2019年4月1日から、働き方改革関連法案
(「残業時間の上限規制」「年5日の有給取得」
「勤務時間インターバル制度」「高度プロフェッショナル制度」)
趣旨としては、効率的に業務を行い、
社員や非正規などの立場ではなく、成果によって評価することを促
時間をかければ誰でもできる単純労働の報酬は低くなり、場合によ
アマゾン・ゴーのようなITが駆使された無人店舗の広がりは避け
法案施行後、必然的にレジャー関連業界(旅行、スポーツ、趣味な
働き方改革を促進するRPA、AIなどの技術やサービスは、すで
(2)TPP11の発効
昨年末、TPP11(包括的及び先進的なTPP協定:CPTPP
TPP11には、オーストラリア,ブルネイ,カナダ,チリ,日本
メキシコ,ニュージーランド,ペルー,シンガポール,ベトナムの
要は輸出入に伴う関税等の緩和であり、貿易関連業種は恩恵を受け
ただ、米国が抜けているため、従前のTPPに比べたら、効果は各
(3)東京五輪の前年
2020年の東京五輪の前年のため、建設関連の需要は底堅い。
オリンピックは、スポーツの祭典であると同時に企業によっては、
全世界へ自社やサービスをアピールできる機会でもある。
10月中にサービス開始予定の第4のキャリアである楽天モバイル
そういう狙いがあるかもしれない。
(4)新天皇の即位
新天皇の即位によって、日本の空気は変わるかもしれない。
政治経済への好影響がもたらされる可能性もある。
まず、新天皇が即位のタイミングで、どのような言葉を述べられる
【総括】
昨年は、ネガティブなリスクが潜伏していた。
今年は、ネガティブなリスクが顕在化した。
上記の要因や過去からの推移、今年は下記の倒産件数を予想する。
<倒産件数(予測)>
〔上 場〕 → 5(±1)
〔全企業〕 → 8,900(±500)
※ 参照資料
・東京商工リサーチ 『2018年(平成30年)の全国企業倒産8,235件』
http://www.tsr-net.co.jp/news/
・帝国データバンク 『2018年(平成30年) 1月1日~12月31日』
http://www.tdb.co.jp/tosan/syu
・週刊東洋経済 『2019年大予測』
・日経ビジネス 『徹底予測2019』
・週刊ダイヤモンド 『2019総予測』
・週刊エコノミスト 『世界経済総予測2019]』
・週刊エコノミスト 『日本経済総予測2019]』
・プレジデント 『大予測2019年』
──────────────────────────────
【3】 今年の倒産を予測する - 2018年 -予測精度検証
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
昨年の『今年の倒産を予測する - 2018年 -』では、下記の予測を行った。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
<2018年予測:倒産件数>
〔上 場〕 → 3(±1)
〔全企業〕 → 9,100(±500)
(参照元:「今年の倒産を予測する - 2018年」
http://alox.jp/blog/2018/01/30
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
2018年の倒産件数は下記の結果となった。
<2018年結果:倒産件数>
〔上 場〕 → 1
〔全企業〕 → 8,235
2018年の倒産件数予想は、上場・全企業ともに、大きくブレて
予想よりも倒産件数が少なかった。
悲観的すぎた分析だったのかもしれません。
もしかしたら、2019年も悲観的すぎる分析かもしれませんが、
2018年よりも潜在していたリスクが顕在化しているため、保守
──────────────────────────────
【4】 “惑わず”の年
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
今年は、“惑わず”の年としたい。
沈着冷静な心、メンタルを得るべく精進したい。
一瞬の感情や気持ちに左右されず、
自分を俯瞰し、自問自答しつつ、
心の中は「静寂な朝」のような落ち着きを維持できるようにしたい
とは思っていますが・・・。
年末のメルマガにも記載した通り、2019年は怒涛のごとく日が
怒涛過ぎて、体調を崩しました。
久しぶりに風邪らしい風邪を引きました。
沈着冷静な心やメンタルの前に、体力をつける必要がありそうです
大変遅くなりましたが、本年も宜しくお願い致します。
倒産・粉飾ウォッチャー 塙 大輔
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【注意事項】
本メールマガジンは各種情報の提供を目的としております。
各種情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を
保証するものではありません。記載された情報を使用することに
より生じたいかなる損害についても、当社は一切責任を負いかね
ます。また、本メールマガジンに記載された意見・見通しは
表記時点での私見を反映したものであり、
今後変更されることがあります。
【バックナンバー】
http://alox.jp/blog/
【各種お問い合わせ】
http://alox.jp/contact.html
【発行・編集】塙 大輔
E-mail: aloxmail@alox.jp
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━