【Alox】 『第三の眼 ~看破する力~ 』 http://alox.jp/ vol.8
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◆ 目 次 ◆
【1】 今号の一言 『共同化できない業務』
【2】 本文 『外部資本の“還流” - 山水電気 -』
【3】 編集後記 『リスクを取って勝負する』
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【1】 共同化できない業務
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「システム共同化」が時代のトレンドである。
共同化することにより、システム開発のコスト削減とメンテナンス料金の低減が可能であり、
多数の金融機関が共同化を選択している。
ただし、これは共通業務というべきものに限られる。
例えば、ATM(現金自動預け払い機)など、どの金融機関も同じ
オペレーション(入金、出金、振込、通帳記入)が想定されるものについては共同化しやすい。
では、共同化できない業務とは何か?
「人の判断が必要なもの、つまり人間臭いもの、あえて言えば主観的な要素が入り込む業務」は、
共同化できない。
企業審査の業務でいえば、法人の属性情報や決算書をシステムへ登録し、
財務分析や倒産確率、金利の計算を行うことは、共同化できる。
だが、出てきた分析を解釈し、その企業への最終評価を行う業務、つまり審査業務は共同化できない。
審査業務は、世界経済、日本経済の動向、業界動向、日々の信用情報、日本政府の政策、
自社の審査基準、消費税の影響等を勘案し、個別企業の分析結果を解釈しなければならない。
仮に、この判断や解釈する業務を不要と考え、全て統計モデルに基づく倒産確率で
企業審査を行うならば、システムの共同化は可能だ。
その場合、極端な話だが、どこの金融機関でも同じ金利による貸出となり、
金融機関の主体性はなくなり、競争もなくなる。(ある意味、金融機関は1つだけあれば事足りる。)
やはり、そうはならない。
金融機関に限らず、事業会社においても、審査業務における判断業務を
共同化することは、あり得ない。
それでは、本文をお楽しみください。
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【2】 外部資本の“還流” - 山水電気 -
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【報道概要】
2014年7月9日、老舗オーディア機器メーカーとして知られる山水電気が、
東京地裁から破産手続き開始決定を受けた。負債は3億5000万円。
一時は、売上500億円を計上するほどのオーディオメーカーとして名を馳せたが、
オーディオブームの衰退やデジタル化の波に遅れ、業績不振となった。
スポンサーとして香港のグランデ・グループを得たが、
そのスポンサー企業も破綻して、2012年には民事再生法申請するも、
資金不足に悩まされ、ついには破産することとなった。
---- アラーム管理システム(OX理論)の分析情報 ----
【会社概要】
社 名 山水電気株式会社
市 場 東証1部(2012年5月3日まで)
証券コード 6793
業 種 電気機器
従業員数 5人(連結)
所在地 東京都大田区蒲田5-29-3 酒巻ビル7F
【アラーム管理システム(OX理論)】
OX格付 B 【11】(2010年12月連結決算)
【分析表1・7とBSグラフ】



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---- 終了 ----
【2度の倒産】
山水電気は、2012年4月2日に民事再生法申請し、2014年7月9日に破産手続き開始となった。
ただし、著名な「SANSUI」ブランドは、2012年の民事再生法申請後、
東証1部の株式会社ドウシシャが日本国内ライセンスを取得しており、
新生SANSUIとしてデジタルオーディオ製品が展開されている。
つまり、日本に限って言えば、今回破産手続き開始となった山水電気は、
「SANSUI」ブランドとは関係のない会社である。
【「投資その他資産」と「純資産」のみの貸借対照表】
山水電気にとって、最後となる有価証券報告書に記載された貸借対照表は、
滅多にお目にかかることがない代物である。
<貸借対照表グラフと詳細>


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なんと、貸借対照表の借方の99%は「投資その他資産」であり、
貸借対照表の貸方の99%は「純資産」である。
ほぼ流動資産や負債がないため、営業活動が停止であることは分かる。
一方で「純資産」が「投資その他資産」へ“変貌”していることも認知できる。
【「長期預け金」と「長期未収入金」は親会社と役員の会社】
「投資その他資産」を深掘りすると“非常に興味深い情報”にお目にかかることができた。
有価証券報告書によれば、「投資その他資産」に含まれる科目は、
「長期預け金」と「長期未収入金」である。
気になるのは、「長期預け金」と「長期未収入金」の相手先だ。
<山水電気の利害関係者と関係会社取引概要図>

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・相手先企業群
赤井電機株式会社(役員兼務)
「長期未収入金」 97百万円
ナカミチ株式会社(役員兼務)
「長期未収入金」 2億15百万円
ナカミチ販売株式会社(役員兼務)
「長期未収入金」 87百万円
サンスイ・エンタープライゼス・リミテッド(親会社の孫会社)
「長期未収入金」 2億10百万円
「長期預け金」 19億23百万円
ザ・グランデ・(ノミニーズ)・リミテッド(親会社の孫会社)
「長期未収入金」 8億14百万円
ジ・アルファ・キャピタル・サービセス・リミテッド(親会社の孫会社)
「長期預け金」 24億95百万円
※
相手先企業群の預け金や未収入金の合計は約58億円になりますが、
貸借対照表において貸倒引当金が4億円ほど存在するため、
総資産合計は約54億円となります。
つまり、54億円の純資産(株主の投資した資本≒現金)は、
44億円近くもの現金を親会社の関連会社へ「長期で預け」、
さらに10億円近くも「長期で未回収な債権」へと変貌したわけだ。
この貸借対照表を見ると、
「末期の山水電気は、親会社が投下した資本を
親会社の関連会社へ振り分けるゲートとして存在する会社」で
あったと言っても過言ではない。
【総括】
親会社が子会社の資金を吸い上げること自体は、一般的なことである。
ほとんどの親会社は、子会社の現預金を吸い上げ、それを重点分野(子会社)へ
投資する。
だが、山水電気の場合は、親会社の投資が利用される形跡もなく、
そのまま「預け金」という名目で、親会社の子会社へ還流していることが、
奇異に映る。
2011年5月には、親会社のグランデ・グループが経営破綻したため、
親会社向けの「長期預け金」「長期未収入金」等の総額約54億円の不良債権と
なってしまった。
山水電気の倒産は、「資本調達先の精査(審査)の重要性」を知らしめる事例と言えるだろう。
※ 参照資料
『第74期(2010年)山水電気 有価証券報告書』
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【3】 「リスクを取って勝負する」
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古い話になるかもしれないが、ワールドカップのサッカー日本代表は、
「リスクを取って勝負する姿勢」が、やっと第3戦目に見られた。
しかし、相手が悪く、コロンビアに極めて効率の良いカウンターを
浴びて、撃沈した。
誰もが感じた通り、第2戦のギリシャ戦にもっとリスクを取って
戦う姿勢を見せて欲しかった。
改めて、「技術は優れていても戦えない人や
コンディション不足の人」は、代表に選んじゃいけないと思いました。
やっぱ、一昔前のゴン中山やラモス瑠偉、柱谷哲二のようなチームを
鼓舞して戦う姿勢が体からあふれ出るような人が代表の中心にいないと
駄目ですね。
まあ、これは会社についても、組織についても、言えることだと思います。
最後の最後は、「リスクを取って勝負するかしないか」、
「勝負する際にどれほどの情熱をもって立ち向かうか」が
勝敗を左右するものと考えます。
そう考えると、ギリシャの予選突破は、至極当然に見えました。
彼らは、自国の経済事情から安ホテルに泊まりながらも、
自国を鼓舞するためにも、実に気持ちの入った試合を第3戦目にしていました。
※
またもや、3ヶ月ぶりのメルマガとなりました。
もっと早く出そうと思っていましたが、少し落ち着いたと思ったら、
そこには険しい山が2つも3つもありました。
次回は、定例メルマガの「アラーム分析ランキング」を予定して
いるので、もうちょっと早く配信できると思います。(塙)
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