今年の倒産を予測する - 2014年 - | OX理論が測る企業価値

OX理論が測る企業価値

26年前、資金繰りに特化した財務分析手法が産声をあげた。
それは、【あらかん】から【OX理論(アラーム管理システム)】へと進化を遂げた。
【OX理論】を土台として、企業分析にいそしむALOX社専属ライターのメールマガジン、それに付随するこぼれ話を掲載。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2014.01.31
【Alox】  『第三の眼 ~看破する力~ 』  http://alox.jp/    vol.6
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◆ 目 次 ◆


【1】  今号の一言   『国政選挙を超える都知事選』

【2】  本文        『今年の倒産を予測する - 2014年 -』

【3】  編集後記     『見つける年』


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【1】  国政選挙を超える都知事選
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今年は、細川元首相の都知事選立候補によって、幕が開けた。
「脱原発を旗頭に活動し、選挙に滅法強い“自由人”の小泉元首相」の支援を
得たことによって、「勝算あり」と踏んでいるのだろう。

対抗は、自民党の支援を得ている舛添氏や
石原元都知事が支援を表明した田母神氏だが、
インパクトという点では、“元首相連合”には敵わない。

最も優勢が伝えられる舛添氏も、組織(自民党)に不満を抱いて
離党(除名された)したにも関わらず、
その組織(自民党ではなく、自民党東京都連)の支援によって、
有力候補となっている。

義理人情や節操を大事にする人は、“小泉”進次郎氏(自民党)の意見に同調する。

「(舛添氏を)応援する大義はないと思う。
自民党を除名された方を支援することも、
除名された方が支援を受けることも、 私にはよく分からない」


一方、元首相連合も内紛の報道があり、足元が覚束ない。

この結果、地味ながらも着々と有権者の支持を得ている
“第三の男”が当選する可能性も出てきた。

いずれにせよ、2014年2月9日には
日本で開かれる東京五輪の“顔”が選ばれる。
今回の都知事選は国政選挙を超える“インパクト”がある。

それでは、2014年第1号をお楽しみください。



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【2】  今年の倒産を予測する - 2014年 -━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



2013年の倒産動向を振り返り、2014年の倒産について予測する。


【2013年の倒産件数(上場企業)】
上場企業の倒産件数:3社  〔2012年:6社〕 <前年比0.5倍>


昨年倒産した上場企業は下記の通りである。

03月14日 東京カソード研究所(6868) 電気機器
06月27日 インデックス(4835) 情報通信
08月30日 ワールド・ロジ(9378) 倉庫・運輸


クロニクル(9822)は7月17日に上場廃止となり、
8月27日に自己破産した。
上場企業は、実質4社が倒産したと言える。



【2013年の倒産件数(全企業)】
倒産件数:10,855社    〔2012年:12,124社〕   <前年比0.90倍>
負債総額:2兆7823億円 〔2012年:3兆8345億円〕 <前年比0.73倍>


上場・非上場ともに、倒産件数も負債総額も「激減」した。
倒産件数は22年ぶりに11,000社を下回る結果となった
語弊を招くかもしれないが、“異常値”と言える程に少ない。

後ほど、詳細に解説するが、
“実質延長”の中小企業金融円滑化法や
不良債権定義の緩和措置の影響は大きい。


≪2004年~2013年倒産件数(全企業と上場企業)≫

http://alox.jp/wp-content/uploads/2014/01/140129_kensuu.pdf

++++【2013年予測の検証】++++

『今年の倒産を予測する【2013年】』では、下記の予測を記載した。

<2013年予測:倒産件数>
〔上 場〕   →  10(±3)
〔全企業〕  →  13,500(+1000)


2013年の結果は下記通りである。

<2013年結果:倒産件数>
〔上 場〕   →  3
〔全企業〕  →  10,855


上場企業、全企業ともに予想を下回る倒産件数だった。

円安による輸出系企業の回復、
株高や不動産価格の上昇による企業のバランスシートが
良化しているのは、間違いない。
しかし、それは倒産が減っている大きな要因ではない。

昨年の時点では、「安倍政権、日銀、金融庁のトライアングル」に
よる倒産抑制政策がこれほどの実行力と効果をもたらすとは
思えなかった。

トライアングルの実行力を甘く見た結果、
倒産件数を多く見積もってしまったと認識している。


++++【2013年予測の検証終了】++++




【今年は?】
上場非上場に関わらず、倒産件数はさらに減少へ転じる。



〔ネガティブ要因〕
(1)消費税率を8%へ引き上げ
4月1日から、消費税率が8%となる。
3月に駆け込み需要が発生し、4月~5月は消費が冷え込むだろう。
生鮮商品への影響は軽微だろうが、
あらゆる業界の“腐らない物”の販売は落ち込む。

物の売れない4月~5月の時期を見越して、
内部留保を貯めている企業は特に問題ないが、
それ以外は苦境に陥るだろう。



(2)中国の失速
世界の工場として勇名をはせたのは、今は昔である。
人件費の膨張や度重なるストライキ、役人の腐敗、
さらにはシャドーバンクによる高利回り商品のデフォルト等、
いつハードランディングというべき事態が起きても不思議ではない。

特にシャドーバンクによるサブプロライムローンと近しい商品群は、
金融システムの不安定にさせる爆薬であり、1つのデフォルトが
連鎖して他のデフォルトをもたらす可能性は高く、
一気に社会情勢を不安定にさせるかもしれない。



(3)各国の情勢不安
米国における国債発行枠の拡大問題、タイの反政府派のデモ、
アルゼンチンや東欧諸国の通貨下落、
米自治領のプエルトリコ財政破綻危機、
シェールガス革命によって産油国としての立場が弱くなる中東の国等は、
ネガティブな不安定材料である。



〔ポジティブ!?要因〕
(1)中小企業金融円滑化法の“実質”延長
2013年12月30日の日本経済新聞において掲載された
『中小企業、過度に延命? 円滑化法終了後も続く返済猶予
 廃業・事業転換支援が重要に 』の記事によると
中小企業金融円滑化法が2013年3月末に期限切れとなったにも関わらず、
中小企業による返済期日等の貸し出し条件を変更する依頼が、
2013年4月~9月にかけて前年同期なみの58万件もあり、
その申請に対する金融機関の実行率は過去最高の98.8%にも上った


上記の事実を「中小企業金融円滑化法の“実質”延長」と
表現することに、異論を挟む人は皆無だろう。

金融機関は、金融庁の強力な要請に基づき、
後先を考えずに”、中小企業のリスケ依頼を受け入れている。

98.8%もの実行率を踏まえると、“後先を考えずに”と
表現することに、何も躊躇いはない。

今は、「中小企業は金融機関から借入を行っても、
期日通りに返済しなくても問題はない。
なぜなら、金融機関は貸し出し条件の変更依頼に対して、
98.8%もの実行率で応じてくれるからだ。」という時代である。


倒産件数は少なくなるが、極めて異常な時代であることは、
ご理解頂けると思う。



(2)金融検査マニュアル・監督指針の改定
2009年12月4日に改定された金融検査マニュアル・監督指針が
「中小企業金融円滑化法の“実質”延長」と強力なタッグを
組んでクローズアップされている。

本改定において、金融機関が中小企業向け融資の貸付条件の変更等を
行っても不良債権とならないための要件が緩和された。

具体的には、貸出条件等の変更を行っても、
債務者が「経営改善計画が1年以内に策定できる見込みがある場合」や
「5年以内(最長10年以内)に経営再建が達成される経営改善計画がある場合」は、
「経営改善計画を策定していない場合であっても、債務者の実態に即して
金融機関が作成した資料がある場合」には、不良債権に該当しない。

≪中小企業金融円滑化法の期限到来後の検査・監督の方針≫


http://alox.jp/wp-content/uploads/2014/01/140131_kinyuu.pdf

この改定があるからこそ、金融機関は貸出条件の変更に応じる。
これがなければ、金融機関も不良債権増加で貸倒引当金を
計上しなければならず、費用増で利益が少なくなる。

昨今のニュースでは、銀行の決算が好業績となっている。
しかし、過去と同様の定義で不良債権を定義付けていれば、
確実に現在よりも利益は低くなる。


これは、「日本国の金融行政の方針が変更となった」と
解釈すべき事態である。

つまり、日本国として、不良債権の定義は緩いまま維持し、
中小企業金融円滑法の期限後も、期限前と同様の対応するように
金融機関へ指導しており、その結果として倒産が少なくなった。


天災や外部の突発的な出来事が起こらない限り、
この方針は維持されることが予想され、結果として倒産の件数は
抑制されるだろう。



(3)株と不動産の高騰
日経平均株価は15,000円前後をキープしており、
東京五輪決定や東京駅近郊の開発もあって不動産価格は上昇している。

結果的に、企業の資産価値が上昇し、
金融機関の担保に基づいた融資は増加している。


〔参考〕
『上場倒産件数と日経平均株価【大納会終値】の推移』
<上場倒産件数> <日経平均株価【大納会終値】)>
2004年  11    11,489
2005年  8     16,111
2006年  2     17,226
2007年  6     15,308
2008年  33    8,860
2009年  20    10,546
2010年  10    10,228
2011年  4     8,455
2012年  6     10,395
2013年  3     16,291
≪上場企業の倒産件数と大納会終値のグラフ≫

http://alox.jp/wp-content/uploads/2014/01/140129_stockkensuu.pdf

≪上場企業の倒産件数と大納会終値の関係グラフ)≫

http://alox.jp/wp-content/uploads/2014/01/140129_relation.pdf




(4)ソチ冬季五輪とブラジルワールドカップ
2月にはソチ冬季五輪、6月にはブラジルワールドカップが開幕する。
観戦に絡む業態(テレビ本体、ケーブルテレビ、観戦ツアー、
飲食店、関連グッズ)には、活況をもたらすこととなるだろう。



(5)IPOの増加
着実に新規上場を行う企業が増えている。
市場で調達した資金を製品開発やサービスの拡充、
海外展開等で活かそうとする企業が増えており、非常に良い。

ただし、上場目的会社とも言うべき企業が発生する可能性も
あることはお伝えしておく。
(3億円の売上を120億円と偽ってマザーズへ上場し、
半年後に倒産したエフオーアイのような事例もある。)



(6)東京五輪と国土強靭化計画
東京五輪や国土強靭化計画により、公共事業の件数は
高水準のまま推移する。

建設関連企業の案件がなくなることは、しばらくない。

ただし、報道にもある通り、資材の高騰や職人不足は深刻であり、
利益率の高い案件はそれほど多くはなく、下請けに位置する
中小の建設会社は悲鳴を上げている。



【総括】
上記の要因や過去からの推移を考慮すると共に、
今年は下記の件数に落ち着くのではないだろうか。


<倒産件数>
〔上 場〕   →  2(±2)
〔全企業〕  →  10,000(±1000)


※ 参照資料
・東京商工リサーチ 『2013年(平成25年)[1-12月] 全国企業倒産状況』
http://www.tsr-net.co.jp/news/status/yearly/2013_2nd.html
・週刊東洋経済
 『2014年大展望&2030年未来予測』 新春合併特大号
・日経ビジネス ASSOCIE
 『今、知りたい必修キーワード150』 2014年2月号
・PHPBusiness THE21
『なぜか仕事ができる人の考える技術』 2014年2月号




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【3】  見つける年
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今年は、“見つける年”としたい。

ここ数年、業務に忙殺され、時間のみが過ぎ去っていく日が続いた。

今年は、「自らの未開発の部分から想定外の自分を掘り出したい」と
思っています。(もちろん、それが有ればですけど・・・)

特定の分野に対して、「継続して考え続けること」を実践すれば、
天啓がひらめいて導かれるものと勝手に思っています。

ちなみに、このメルマガは上記のことを実践しているつもりでおります。

時期を見て、定例メルマガの「今年の倒産を予測する」や
「今年の粉飾を把握する」等を題材として、会合を行うのは一考だと
思っています。(「今年の粉飾を把握する @東京」のようなイメージ。)

大変遅くなりましたが、今年も宜しくお願い致します。



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