オックススタンダードメールマガジン 『 S T A N D A R D 』
http://www.ox-standard.co.jp/
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◆ 目 次 ◆
【1】 今号の一言 『“蛇口全開時代”の終了』
【2】 本文 『“臨時”の上場廃止基準 - メルクス -』
【3】 編集後記 『個人名の明示』
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【1】 “蛇口全開時代”の終了
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たとえて言うならば、“蛇口”は全開だった。
しかし、徐々に栓が締まり、水流は弱まった。
政府は、震災対応や中小企業向け資金繰り支援のため、
湯水の如く大量の資金を“放水”した。
だが、2013年3月末には中小企業金融円滑化法
(俗にいうモラトリアム法)が終了する。
さらに、信用保証協会による100%保証する緊急制度も、
2012年度中に廃止される方向となった。
一方で、消費税の増税はほぼ決定し、
東京電力の従業員へボーナスを払う前提の試算によって
電気料金は高くなり、加えて円高、原油高、ユーロ債務危機と
ここ数年で最悪のビジネス環境である。
間違いなく、これから企業倒産は増加する。
全開の蛇口から溢れる“水”を飲むことによって、
生きながらえてきた企業は、“脱水症状”に陥るだろう。
それでは、本文をお楽しみください。
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【2】 ”臨時”の上場廃止基準 - メルクス -
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【報道概要】
2012年6月11日、元東証2部でフェニックス銘柄のメルクス(7934)は、
東京地裁へ民事再生法の適用を申請した。負債総額は27億1559万円。
皮革加工を主力にして事業展開していたが、
競争激化や原料の高騰などにより、3期連続で最終赤字となっていた。
2011年6月には、時価総額が上場廃止基準に抵触し、
東証2部からフェニックス銘柄に移行した。
中国企業との合弁事業を模索したが、金融機関からの資金調達が困難となり、
今回の措置となった。
---- アラーム管理システム(OX理論)の分析情報 ----
【会社概要】
社 名 メルクス株式会社
市 場 元東証2部(フェニックス銘柄)
証券コード 7934
業 種 その他製品
従業員数 104人(連結324人)
所在地 長野県飯田市松川町2211
監査法人 新日本有限責任監査法人(2011年3月期)
【OX理論】
OX格付 BB 【31】(2011年3月連結決算)
【分析表1・7】


http://www.ox-standard.co.jp/pdf2/120629/MELX201103_ren.pdf
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<OX理論(アラーム管理システム)とは>

http://www.ox-standard.co.jp/pdf2/oxanalysis.pdf
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3期連続の赤字で、債務超過である。
財務分析は不要であり、銀行の融資姿勢次第で、
いつ倒産しても不思議ではない状況だった。
平成24年3月期 決算短信には、
「金融機関が借入金弁済計画の合意に至っていない」という記述もあった。
---- 終了 ----
【株価低迷と時価総額】
ここ1年、日経平均株価は8000円から9000円前後で揺れている。
この結果、当然の如く、企業の時価総額も低空飛行を続けている。
各証券取引所は、企業に対し、一定の時価総額の維持を求めており、
それを満たさない場合は、9ヶ月の猶予期間を経て、上場廃止となる。
6月11日に倒産したメルクスも、
時価総額が“6億円”を下回り、上場廃止となった。
【時価総額に関する上場廃止基準】
証券取引所や市場によって、上場廃止基準は異なるが、
時価総額に関する上場廃止基準(流動株式時価総額、浮動株時価総額を含まない)は、
概ね下記のように理解すれば、事足りる。
〔東証1部・2部〕 10億円
〔地方・新興市場〕 5億円
〔その他〕 2~3億円
メルクスは東証2部に上場していた。
それゆえ、平時ならば、上場廃止基準の基準値は10億円が適用される。
だが、2009年から始まった緩和措置によって、
現在は6億円が上場廃止のボーダーラインとなっている。
その6億円を2010年7月末に下回り、猶予期間を経て上場廃止となった。
【時価総額基準の緩和措置】
2012年12月末まで、全ての証券取引所が
「現下の株式市場の状況に鑑み」という理由によって、
時価総額基準を緩和している。
それは、下記の通りである。
〔東証1部・2部〕 6億円
〔地方・新興市場〕 3億円
〔その他〕 1.2~1.8億円
<時価総額に関する上場廃止基準一覧表及び“該当予備群”>


http://www.ox-standard.co.jp/pdf2/120629/jika_haishi.pdf
【考察】
年末までに「株価の急回復」か、
もしくは「緩和措置の再延長」がなされない限り、
20社程度の上場企業が2013年1月から上場廃止の猶予期間へ
入ることが想定される。
その後、メルクスと同様に上場廃止後に倒産する企業や
「上場廃止基準に抵触後の猶予期間中」に倒産する企業が出てくるだろう。
年初の『今年の倒産を予測する - 2012年 -』
(http://ameblo.jp/oxalarm/entry-11151140914.html)でも
指摘しているが、現行の株価水準ならば上場企業の倒産件数は
30社あっても何ら不思議ではない。
現在とほぼ同額の8000円株価時代だった
2002年や2008年の上場企業の倒産件数は、29社と33社である。
2012年も半年経過したが、上場企業の倒産件数は3社である。
『上場倒産件数と日経平均株価【大納会終値】の推移』
<上場倒産件数> <日経平均株価【大納会終値】)>
2002年 29 8,579
2003年 19 10,677
2004年 11 11,489
2005年 8 16,111
2006年 2 17,226
2007年 6 15,308
2008年 33 8,860
2009年 20 10,546
2010年 10 10,228
2011年 4 8,455
≪上場企業の倒産件数と大納会終値のグラフ≫

http://www.ox-standard.co.jp/pdf2/120120/120116_3.pdf
【総括】
倒産件数が少ない理由として、
「公的及び民間の景気対策補助」が存在する。
上場廃止基準の緩和措置も、企業の延命に貢献した。
今後も株価の上昇は期待できないため、緩和措置の延長がない限り、
上場廃止企業の件数は増加する。
それに比例して、倒産件数も正常化(倒産件数の上昇)されるのは必定である。
もう国にも民間にも、企業の延命措置をするための財源や余力はない。
上場廃止や倒産の件数が増えることになるが、今までが少なすぎたのであり、
“臨時”から“平時”へ戻ると理解すべきだろう。
※
ジャスダックについては、ヘラクレスとの統合によって、
多くの企業が浮動株時価総額基準へ移行するため、
単純計算による時価総額によって上場廃止基準に抵触する企業は少ない。
ただ、株価が下がるということは、浮動株氏時価総額基準に
抵触する企業が増えることを意味するため、同様に上場廃止件数が
増えることになる。
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【3】 編集後記 『個人名の明示』
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通勤途中、運送会社のトラックを目にした。
後部には、運転手の名前が書かれたプレートが貼ってあった。
ほとんどのトラック、バス、電車、さらには飛行機でも
運転手は、名前を開示している。
流行のFACEBOOKは本名開示が前提である。
新聞や雑誌も署名記事が増えてきた。
個人名の開示や署名は、自らの行動に責任を持つことの証である。
私の場合、ニュースは無機質な情報として匿名でも読むが、
レポートに類するものについては、出所(つまり作者)を確認できないものは、
読んだとしても信用はしない。
もちろん、匿名の情報でも有用なものも多数ある。
匿名の情報の坩堝である2チャンネルは、匿名がゆえに犯罪の温床となる一方で、
企業の不祥事や倒産に関する噂を入手できるため、
信用情報の貴重な情報源である。
結局は、情報を受ける側の感度によって、情報を取捨選択するしかない。
とはいえ、これだけ署名が増えると、
会社や組織も重要だが、個人の比重が高まっているということなのだろう。
最近では、プロジェクトごとに個人(もしくはチーム)が集まって、
仕事をする人々がいるらしい。
滅私奉公精神で会社に忠誠を尽くすことは、リスクと言える時代が来ているのかもしれない。
※
本当にどうでもいいことだと思いますが、
イングランド代表ルーニーは、どんどん“ガスコイン化”しているなと
と思います。
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