法人を理解する  - 第2回 - | OX理論が測る企業価値

OX理論が測る企業価値

26年前、資金繰りに特化した財務分析手法が産声をあげた。
それは、【あらかん】から【OX理論(アラーム管理システム)】へと進化を遂げた。
【OX理論】を土台として、企業分析にいそしむALOX社専属ライターのメールマガジン、それに付随するこぼれ話を掲載。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2011.6.30
オックススタンダードメールマガジン 『 S T A N D A R D 』
http://www.ox-standard.co.jp/
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◆ 目 次 ◆

【1】  今号の一言   『リーダー交代』

【2】  本文       『法人を理解する - 第2回 -』

【3】  編集後記


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【1】  リーダー交代
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日本リーダーの交代が事実上決定した(若干時期は遅れそうだが)。

菅首相が避難所で罵声を浴びた際の狼狽した姿は、
“リーダーとしての資質の欠如”を存分に晒してくれた。


あの時、誠心誠意に一国の首相として謝るべきことは謝り、
その上で今後の道筋について胸を張って大きな声で語ることができれば、
“菅降ろし”の風が吹くこともなかったのではないだろうか。


次のリーダーが誰になるにせよ、最初の演説で何を語るのか、
リーダーたる気概と決意に満ちた演説を期待したい。

それでは、本文をお楽しみください。


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【2】  法人を理解する - 第2回 -
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第1回に続いて、個別の法人情報について記載する。


第1回については、下記URLをご参照ください。
≪法人を理解する - 第1回 -≫
http://ameblo.jp/oxalarm/entry-10909341384.html



<営利>
(7) 特例有限会社(旧有限会社)
〔定  義〕
会社法施行以前(2006年5月1日)に有限会社だった法人である。
※ 現在は、有限会社を設立することはできない。


〔法  律〕 会社法(2006年5月1日までは、有限会社法)



〔特  徴〕
下記の特徴がある。
1)出資者が全て自社の社員であり、かつ50人以下である
2)資本金は300万円以上である
3)役員任期に制限がない
4)決算の公告義務はない
5)会計監査の義務はない


〔透明度〕 非公開


〔解  説〕
小規模で持分(株式の概念と同じ)の譲渡を予定しない閉鎖的な法人である。

イメージとしては、株式会社(非上場大会社)と近く、同族企業や老舗企業、
ワンマン社長の法人がその多くを占めており、市場を通じた資金調達が
不要であり、持分の譲渡を嫌う企業も多い。

会社法施行前までは、有限会社という響きから小規模企業のイメージが
先行し信用が得られない場合もあった。
会社法施行後は、社名を有限会社から株式会社に商号変更できるにも関わらず、
長年の実績や社歴をアピールできるため社名変更する企業をあまり耳にしない。



(8) 持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)
〔定  義〕
社員の地位を持分と呼ぶことに由来しており、相互に人的信頼関係を
有する少人数の者が出資して共同で事業を営む法人である。


〔法  律〕 会社法


〔特  徴〕
社員である出資者の責任によって、3つに分けられる。
・合名会社:全員が無限責任社員である
・合資会社:無限責任社員と有限責任社員が存在する
・合同会社:全員が有限責任である


〔透明度〕 非公開(+)


〔解  説〕
社員=出資者である。
株式会社は、株主と経営者が分離しているが、「所有と経営が一致している」
のが大きな特徴である。

社員が信用の基礎となることから、“人的会社”という呼称もある。
(反対に、株式会社や有限会社は、信用の基礎が財産にあることから
“物的会社”と呼ばれる。)

※ 合同会社は、日本版LLCとも呼ばれている。
また、貸借対照表及び損益計算書の作成義務があり、債権者に対しては
書類を開示する義務がある。



(9) 外国会社
〔定  義〕
外国の法令に準拠して設立された法人である。


〔法  律〕 会社法(有報提出企業には金融商品取引法も適用)


〔特  徴〕
下記の特徴がある。
1)法務局への登記が必要である
2)日本に住所を有する代表者を定める必要がある
3)貸借対照表の決算公告の義務がある


〔透明度〕 不透明


〔解  説〕
外国法人の日本支社と考えれば良い。
巷には、思いの外、外国法人の日本支社がある。
東証には11社の外国会社があり、日々株価が更新されている。



<擬似外国会社>
外国の法律にもとづいて設立された会社だが、日本において営業を行うことを
主たる目的とするものを疑似外国会社という。

タックスヘイブン(ケイマン等)を経由して特別目的会社(SPC)を
設立する場合などもこれにあたる。

会社法では、疑似外国会社の日本における法人格を否定する立場をとっており、
「もし擬似外国会社が継続取引を行った場合は、このような行為を行った者に
対して、当該会社と連帯して責任を負う」ことを第821条に明記している。



(10) 特別目的会社(SPC)
〔定  義〕
企業の保有する資産(債権、不動産)を譲り受け、その資産を担保に
資産担保証券(ABS)などを発行して資金を調達するための株式会社、
持分会社、組合である。

「資産の流動化に関する法律」に規定される“特定”目的会社も
特別目的会社の一種である。


〔法  律〕 会社法、資産流動化に関する法律


〔特  徴〕
「資産流動化に関する法律」によって設立されるSPCには下記の特徴がある。
1)毎年決算日後3ヶ月以内に内閣総理大臣宛に所轄の財務局経由にて
事業報告書、計算書類及び利益処分計算書を提出する必要がある
2)配当金の損金算入が認められている
3)特定資産として不動産等を取得する際に、一定の要件を満たすと
登録免許税や不動産取得税の減免措置がある


〔透明度〕 不透明


〔解  説〕
資産の流動化や証券化など特別の目的で設立されるペーパーカンパニーである。
税制上の優遇措置や設立の事務手続きの利便性などの面から、
海外のタックスヘイブンと呼ばれる国や地域に設立されることも多い。

企業等は、資産の売却によってバランスシートをスリム化して
各種財務指標の改善を図ることができ、資金調達の多様化や効率化、
資金調達コストの削減が可能となる。

ただし、米国のエンロンによる損失隠しにおいて、連結対象外のSPCが
暗躍したこともあり、日本においても、SPCについて連結対象とするのか、
対象外とするのか、議論が分かれている。
現段階では、規制や条件が厳しくなっているとはいえ、SPCを連結対象外と
することは可能であることは認識しておかなければならない。



(11) 投資法人
〔定  義〕
投資信託法に基づいて設立される法人である。
機関として、投資主総会、役員会などがある。
従業員は存在しない。


〔法  律〕 投資信託法(有報提出企業には金融商品取引法も適用)


〔特  徴〕
日本においては、ほとんどが不動産投資信託(いわゆるJ-REIT)のために用いられている。

上場企業は、下記の開示が必要である。
1)有価証券報告書 <法定開示> 毎事業年度終了後3ヶ月以内
2)臨時報告書    <法定開示> 期限はないが、随時開示
3)決算短信     <適時開示> 決算期末後45日以内

ほとんどのJ-REITは、分配金を半期ごとに行うため、決算期が年2回ある。


〔透明度〕 透 明(-)


〔解  説〕
投資口(株式会社の株式に相当)を発行し投資家から出資を募り、
有価証券や不動産などの特定資産へ投資して運用することを目的とする“器”
(Special Purpose Vehicle、特別目的事業体)である。

投資判断や運営は外部の資産運用会社が行っており、法人は正に“器”でしかない。

それゆえ、投資法人を分析する場合は、その運営会社や投資主を見なければいけない。



(12) 監査法人
〔定  義〕
公認会計士法に基づいて設立される法人である。
企業の決算を監査又は証明を組織的に行うことを目的としている。

(日本では、新日本有限責任監査法人、有限責任監査法人トーマツ、
有限責任あずさ監査法人が3大監査法人と呼ばれており、上場企業の8割が
3大監査法人と監査契約を締結している。)


〔法  律〕 公認会計士法


〔特  徴〕
下記の特徴がある。
1)設立には、5人以上の公認会計士の社員が必要である
2)パートナーと呼ばれる出資者(「社員」)が「無限責任」を負う。
ただし、2008年4月1日からは有限責任監査法人と呼ばれる形態が可能となっており、
その場合は原則として業務執行責任社員のみが「無限責任」となり、
その他の社員は出資の額を上限とする「有限責任」となる。


〔透明度〕 非公開(+)


〔解  説〕
持分会社の公認会計士版である。
つまり、社員=出資者であり、所有と経営が一致している。

持分会社ゆえに、基本的には情報は非開示であり、決算書等は開示されていない。
普段監査する側の監査法人の決算書は、どのような監査がなされているのか興味深い。
(有限責任監査法人については、情報公開を行っており、
ホームページで決算書を閲覧できる。)

監査法人には、それぞれに特色があり、特に中堅や個人の監査法人は、
代表社員によって監査法人の“色”が決まる。
著名なのは、「監査難民の駆け込み寺」という“色”をもっていた
監査法人ウィングパートナーズである。
非常に多くの財務基盤が脆弱でさまざま噂を有する上場企業が、
他の監査法人の辞任後に駆け込んだのが監査法人ウィングパートナーズだった。
同様の“色”を持った監査法人は、今も存在することを明記しておく。



(13) 弁護士法人
〔定  義〕
弁護士法に基づいて設立される法人である。


〔法  律〕 弁護士法


〔特  徴〕
下記の特徴がある。
1)社員は弁護士に限る。
2)全員が無限責任社員である。


〔透明度〕 非公開(+)


〔解  説〕
持分会社の弁護士版である。
ただし、圧倒的に弁護士事務所(個人もしくは組合)の形態の方が多い。
個人と違って、事業の継続性が図れる等のメリットはあるが、あまり利用されていない。

ちなみに、監査法人、弁護士法人、税理士法人、社会保険労務士法人等の
士業法人は、合名会社の規定が多く準用されることから、準合名会社と呼ばれる。



<非営利>
(1) 一般社団法人
〔定  義〕
法人化された営利を目的としない団体である。


〔法  律〕 一般社団・財団法人法


〔特  徴〕
下記の設立要件がある。
1)社員が2名以上いる
2)1名以上の理事の選任を行う
3)定款を作成して公証人の認証を受け、法務局へ設立登記の申請を行い認可される

社員総会や理事などの機関を置くことが法律により規定されている。
大規模一般社団法人(貸借対照表の負債の合計額が200億円以上の一般社団法人)は、
会計監査人を置かなければならない。


〔透明度〕 不透明


〔解  説〕
容易に設立ができる非営利の社団である。
ただし、非営利という意味では、社員に利益を分配しないだけであり、
収益事業を行っても問題はない。
また、法改正によって、公益性がなくても設立できることになった。

非営利を徹底している場合には、収益事業以外の収入には
課税されないなど税制上の優遇措置がある。

よくメディアで耳にする日本音楽著作権協会(JASRAC)は、一般社団法人である。



(2) 一般財団法人
〔定  義〕
法人化された営利を目的としない財産が基礎の団体である。


〔法  律〕 一般社団・財団法人法


〔特  徴〕
下記の設立要件がある。
1)設立者による300万円以上の財産の拠出
2)評議員、理事、監事の選任を行う
3)定款を作成して公証人の認証を受け、
法務局へ設立登記の申請を行い認可される

評議員会、理事会などの機関を置くことが法律により規定されている。
大規模一般財団法人(貸借対照表の負債の合計額が200億円以上の一般財団法人)は、
会計監査人を置かなければならない。


〔透明度〕 不透明


〔解  説〕
容易に設立ができる非営利の財団である。
ただし、非営利という意味では、社員に利益を分配しないだけであり、
収益事業を行っても問題はない。
また、法改正によって、公益性がなくても設立できることになった。

非営利を徹底している場合には、収益事業以外の収入には
課税されないなど税制上の優遇措置がある。

※※
非営利法人全般に言えることだが、非営利法人が営利法人へ
便宜を図るケースがある。財団法人日本漢字能力検定協会事件では、
協会自体は非営利だが、営利のファミリー企業へ架空もしくは
暴利の業務を委託していたことが発覚した。
ファミリー企業では、経費で私的利用のクルーザーや
高級車のリース料が支払われていたという。

※※


(3) 公益社団法人、公益財団法人
〔定  義〕
公益認定を受けた一般社団法人と一般財団法人である。


〔法  律〕 一般社団・財団法人法、公益法人認定法


〔特  徴〕
一般社団・財団法人として設立後、公益認定を受けることにより、
公益社団・財団法人となることができる。

公益認定を受けるには下記の要件を満たす必要がある。
1)経理的基礎を有する
2)技術的能力を有する
3)特別の利益を与える行為を行わない
4)収支相償であると見込まれる
5)公益目的事業比率が50%以上であることが見込まれる
6)遊休財産額が制限を越えないと見込まれる


〔透明度〕 不透明(+)


〔解  説〕
国のお墨付きがある社団と財団である。
税制面等で優遇措置などのメリットは大きいが、
行政庁の監督を受けるため事業報告・予算書・決算書の提出義務がある。

実際に公益として認定される事業は、23の事業(学術、文化、高齢者、
スポーツ、児童、公衆衛生、教育など)に限定される。

公益社団法人としては、能楽協会がある。


次号につづく

※ 参照資料
・Wikipedia 『持分会社』
・Wikipedia 『特定目的会社』
・Wikipedia 『監査法人』
・Wikipedia 『一般社団法人及び一般財団法人に関する法律』
・Wikipedia 『公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律』
・法務省 『一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A』

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【3】  編集後記
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オックス情報に入社した頃にお世話になった大先輩が、インドネシアへ旅立った。
彼の地で、日本人オーナーが営んでいる会社を承継するという話だ。


前回のメルマガにて、日本で働く外国人のバイタリティについて記載した。
それは、自分への叱咤激励と共に“日本を覆う気怠いぬるま湯感”について、
憂いたものでもあった。



だが、現実は違った。
体中から、エネルギーを発散し熱風を巻き起こす人物はいる。
私は、大先輩の話を聞いた時、
「おっ、おっっーー、スゲエー!」と思い、
それに比べ私は、どちらかと言えば自分の内にこもり、
安住の世界に安穏としており、危機感を覚えた。


私もやらなければなるまい。
「日常を淡々と過ごすだけではなく、自らが非日常を作り出す努力をして
人生をエキサイティングにしなければ!」と思いました。


その小さな小さな(本当に小さな)第一歩として、
4年ぶりにフットサルをやってきた。
(ちなみに、個人フットサルという飛び込み参加形態のフットサルです。)
その甲斐あって、淡々とした日常では感じることはない
「人生最大級の筋肉痛と腰痛」という非日常を経験することができました。
少しだけエキサイティングな人生へ一歩前進でしょうか・・・。


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