東京ドーム -設備型サービス業の逆境- | OX理論が測る企業価値

OX理論が測る企業価値

26年前、資金繰りに特化した財務分析手法が産声をあげた。
それは、【あらかん】から【OX理論(アラーム管理システム)】へと進化を遂げた。
【OX理論】を土台として、企業分析にいそしむALOX社専属ライターのメールマガジン、それに付随するこぼれ話を掲載。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2011.4.28
オックススタンダードメールマガジン 『 S T A N D A R D 』
http://www.ox-standard.co.jp/
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◆ 目 次 ◆

【1】  今号の一言  『絆創膏』

【2】  本文       『東京ドーム - 設備型サービス業の逆境 -』

【3】  編集後記


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【1】  『絆創膏』
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東日本大震災後、日本政府は数々の施策を実施した。
それ自体を「意味がない」とは言わない。
間違いなく、“それなり”の効果はあった。

だが、それらは残念ながら「絆創膏」である。
“場当たり的で付け焼刃のテンポラリーなもの”にしか見えない。

2011年4月11日、東日本大震災復興構想会議が設立された。
この会議の使命は、2011年6月末までに「豊かで活力ある日本の再生」の設計図を
描くことである。

少し大袈裟かもしれないが、描かれる設計図によっては東北だけではなく、
日本の未来が変わる。

間違いなく言えることは、“八方美人”の設計図ならば、日本の将来は暗い。

「痛みを伴うが復興のために、日本の将来のために、この構想がベストです。
国民の皆さん、ご理解の上、この国難に立ち向かっていきましょう!」

こんな演説を日本の“リーダー”から聞くことができれば、
日本も捨てたものではない。

それでは、本文をお楽しみください。


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【2】  東京ドーム  - 設備型サービス業の逆境 -
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【震災の爪痕】
東日本大震災は、東北以外にも深刻な爪痕を残した。


千葉県浦安市では、“液状化”の被害が甚大である。
道路から泥水が噴き出し、住宅や電柱は傾き、道路は波打っている。

その結果、“投開票所などの安全性が確保できない”という理由から
「千葉県議選が実施されない」という事態となった。

しかし、このことを声高に非難する人はほとんどいない。
この異例の措置を止むを得ないとする浦安市の現状は、
相当に深刻なものと言える。(※ 千葉県議選は、再選挙の見通し。)



【世界最大級のテーマパーク】
この浦安市には、世界でも有数のテーマパーク
〔東京ディズニーランド・東京ディズニーシー〕を有する
オリエンタルランド(4661)がある。

この夢の国も、震災によって、周辺の道路や駐車場の一部が
液状化し、土砂と水があふれた。
そのため、施設の点検作業を理由に3月12日から休園となったが、
4月15日には営業再開し、現在は夜間も営業している。



【節電 < 自粛ムード】
大震災の影響により、工場や資産の損壊・閉鎖により、多くの製造業が
特別損失のリリースを行っているが、今後も業績や計画の下方修正、
中断等のリリースが出てくるだろう。

特に、“節電と自粛ムード”がダイレクトに影響する
設備型サービス業である遊園地(テーマパークを含む)や
アミューズメント業界は厳しい経営環境となる。


≪理由≫
1.アトラクションやイベントの実施には、大量の電力が必要である。

現状では、電力需要のピークである7月や8月に大型のアトラクションを
動かすのはリスクが高い。予測不能な大規模停電(ブラックアウト)が
起きた時、「アトラクションが止まった」という事態は、想像したくない。

もちろん、通常は自動安全装置によって、
自家発電に切り替わり安全に停止する。
しかし、原発事故を見る限り、“想定外”の事故に対する
バックアップの信頼性については疑問が残る。


2.自粛ムードによる来園者数の減少が見込まれる。

自粛ムードは、節電以上に厄介な問題である。
なぜなら、心の問題だからだ。
電力不足については、明確な対策を講じることができる。
しかし、消費者マインドの収縮(シュリンク)をいかにして開放するかは、
大きなハードルだ。


業種は違うが、セブンイレブンは震災から2週間後の3月26日から
「おにぎり100円セール」を実施することによって、
「モノが足りない」という心理をイベントによって打開することを試みている。


各企業には、消費者マインドを刺激する施策が求められる。

(本来は、国が刺激策を提示し、実施しなければならない。
電力消費を抑える必要があるならば、LEDの電球購入に“スーパーエコポイント”を
付与することにより、「消費を刺激し、節電にもなる」という一挙両得政策を
実施すれば良いと思うのは、私だけはないだろう。)



【企業体力抜群のオリエンタルランド】
オリエンタルランド(4661)は、一時的な来園者数の減少を問題なく
吸収する企業体力を有している。

また、震災時にも慌てずに冷静な対応を行い、入園者からも賞賛されたスタッフ
(キャストと呼ばれる)の質も高く、この苦境も問題なく対応できるだろう。

OX理論の分析においても、常にAAAを維持している。



---- 分析情報 ----

【会社概要】
社  名      株式会社オリエンタルランド
市  場      東証1部
証券コード     4661
業  種      テーマパーク
従業員数     3,993人(連結)
所在地       千葉県浦安市舞浜1-1
監査法人      あずさ監査法人(2010年3月期)

【OX理論】
OX格付       AAA 【92】(2010年3月連結決算)

【分析表1】
$OX理論が測る企業価値-オリエンタルランド2010
http://www.ox-standard.co.jp/pdf2/110428/oriental_201003.pdf

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<OX理論(アラーム管理システム)とは>
OX理論が測る企業価値-<OX理論(アラーム管理システム)とは>
http://www.ox-standard.co.jp/pdf2/oxanalysis.pdf
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---- 終了 ----



【東京ドームの苦境】
一方、オリエンタルランド(4661)と同じ業種分類に属する東京ドーム(9681)は、
ここ数年で最も厳しい経営環境にある。


≪理由≫
1.2011年1月30日にジェットコースターで死亡事故が発生し、
「東京ドームシティアトラクションズ(遊園地)」は、営業休止中である
(2011年4月26日現在)。

2.節電や自粛により、東京ドームにおける3・4月の野球やイベントが中止となった。
広告収入の減少やスポンサー離れも進むことが予想される。

※ 
昨年の2010年12月リリースを見ると、
巨人の不振による試合数減等によって業績予想を下方修正した。

<業績予想の修正に関するお知らせ(2010年12月9日)>
http://www.ox-standard.co.jp/pdf2/110428/tokyodomu_20101219.pdf

今回はそれ以上のインパクトであることは間違いため、
下方修正リリースがあっても何ら不思議ではない。

OX理論の分析結果は下記の通りである。



---- 分析情報 ----

【会社概要】
社  名      株式会社東京ドーム
市  場      東証1部
証券コード     9681
業  種      レジャー
従業員数     1,890人(連結)
所在地       東京都文京区後楽1-3-61
監査法人      有限責任 あずさ監査法人(2011年1月期)

【OX理論】
OX格付       A 【67】(2011年1月連結決算)

【分析表1・7】
$OX理論が測る企業価値-東京ドーム2011_1
$OX理論が測る企業価値-東京ドーム2011_2
http://www.ox-standard.co.jp/pdf2/110428/tokyodomu_201101.pdf

---- 終了 ----



【年商の2倍を超える借入金】
下記は遊園地を保有する上場企業の2010年度連結決算における売上と借入金である。

◇◇ 借入金の大きい順 ◇◇

・東京ドーム(9681)
〔売上〕 819億円   〔借入金〕 1,874億円
〔借入金対売上比〕 2.29倍

・オリエンタルランド(4661)
〔売上〕 3,714億円  〔借入金〕 1,616億円
〔借入金対売上比〕 0.43倍

・よみうりランド(9671)
〔売上〕 145億円   〔借入金〕 327億円
〔借入金対売上比〕 2.25倍

・グリーンランドリゾート(9656)
〔売上〕 77億円    〔借入金〕 111億円
〔借入金対売上比〕 1.44倍


※ 借入金の内訳
(1年以内返済の社債・長期借入金、短期借入金、社債、長期借入金、長期預り金)


比較すると顕著だが、東京ドームの借入金は多い。
売上の2倍を超える借入金がある。
その金額においても、4倍以上の売上があるオリエンタルランドの借入金よりも多いのは、
“異常”と言っても言い過ぎではないだろう。



【東京ドームと読売グループ】
先に記載した借入金において、東京ドームと同様に、よみうりランドの借入金も
売上の2倍超あることが分かる。

よみうりランドは、東京ドームほどに企業体力に衰えはないが、
自粛ムードの煽りを受けることになるだろう。

ところで、よみうりランドと東京ドームには、借入過多や業種以外にも共通点がある。

両社ともに、読売巨人軍との関わりが深く、読売グループ系列と言えるのだ。

ただし、東京ドームと読売グループ本社との間に資本関係はない。
しかし、よみうりランドの2010年3月期有価証券報告書に記載された株主を
見ると第1位が読売グループ本社であり、第4位が東京ドームである。

間違いなく、東京ドームと読売グループは、“繋がっている”。

読売グループには、「借入過多の上場企業が2社存在する」と言っても問題ないだろう。



【総括】
平成23年(2012年)1月期の東京ドームの売上は、
突発的な売上がない限り、前期よりも下がる。

それは、返済すべき借入金の原資がなくなることを意味する。
返済原資を得るために、社内(資産売却、リストラ)か
社外(社債、借入、増資)から、資本を調達しなければならない。

最も手っ取り早いのは、大株主で役員も兼務している
富国生命保険への融資を引き上げることだが、おそらく無理だろう。

2期連続で赤字となっていることを踏まえると、
社外からの資金調達は条件が厳しくなる。

しかし、読売グループの支援を見込んで、
融資や増資に応じる金融機関が現れるかもしれない。


東京ドームをはじめとした設備型サービス業については、
通常の営業活動以外に“特別なこと”が起こることを前提にして、
企業分析することを推奨する。




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【3】  編集後記
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会社の所在地は、新橋である。
いわずと知れたサラリーマンの街だ。

新橋には、リーズナブルな居酒屋や飲食店が多数あり、
サラリーマン同士の“ある種の連帯感”が街の至る所から溢れている。
おそらく、サラリーマンには居心地がいい場所である。

よくテレビで見る街頭インタビューにおいて、
ほろ酔い気味のおじさんが面白トークを炸裂させている場所は、
90%以上の確率で新橋のSL広場前だ。
幸いにして私はインタビューを受けたことはない。

事務所移転を数回経験したが、私にとって新橋は
リーズナブルで交通の便も良く快適だ。

今日は、「今井商店 いきいき亭本舗」で
リーズナブルなうどんを食べる予定です。


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【発行・編集】オックススタンダード 株式会社
アラーム事業部 塙 大輔
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