━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2009.10.30
オックススタンダードメールマガジン 『 S T A N D A R D 』
粉飾の経緯-ゼンテック・テクノロジー・ジャパン- <編集:HNW>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『日本航空(JAL)の再建???』
10月29日、日航グループは企業再生支援機構に対し、
再生支援を依頼した。
現状を俯瞰すれば、JALを民間企業と思う人は、少ないだろう。
半官半民に戻りつつある日本郵政グループに近い。
経営危機が訪れる度に、実質的な国の機関(つまりは税金)
による強力な公的支援がなされ、延命がなされている。
非常に短絡的な考えだが、全日本空輸(ANA)が
何らかの形でJALを支援すれば、
再建の可能性が高まるのでは!?と思う。
過去の事例として、アメリカではMicrosoftがAppleを支援した。
現在は、Appleは革新的なサービスを発表し、
Microsoftの強力なライバルとして復活を遂げた。
ライバル企業がライバル企業を支援するという選択は、時に有効だ。
それでは、OXメルマガ『 S T A N D A R D 』をお楽しみください。
→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→
粉飾の経緯-ゼンテック・テクノロジー・ジャパン-
____________
オックススタンダード(株)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【報道概要】
2009年10月2日、元・大証ヘラクレス上場の
(株)ゼンテック・テクノロジー・ジャパンが
民事再生法の適用を申請した。
当該企業は、過去の不適切な会計処理が表面化しており、
2009年9月1日付で上場廃止になっていた。
【不適切な会計処理】
2009年2月17日付けで、
ゼンテック・テクノロジー・ジャパンのホームページには
『不適切な会計処理に関する調査委員会の最終報告について
http://www.zentek.co.jp/pdf/2009/news_090217.pdf
』が開示されている。
そこには粉飾に至った経緯及びその影響額が詳細に
記載されており、興味深い内容となっている。
特に、「不適切な会計処理等に至った経緯」については、
業績が思わしくない大多数の企業でも同様の会話がなされている
と思われるため、そのまま下記に抜粋する。
・・・・転記・・・・
3 不適切な会計処理等に至った経緯
(1) 平成20年3月期決算についての打合せ
A氏、C氏、D氏、E氏及びB氏は、平成20年4月16日ころに
行われた打合せの中で、複数の議題のうちの一つとして、
平成20年3月期決算の数値についてB氏が報告を行った。
この打合せにおいて、出席者は、平成20年3月期連結決算
の売上高及び利益等の業績見通し数値が思わしくなく、
事業計画との乖離が連結売上高で約17億円あることを
明確に認識し、出席者の一人からこの乖離をどうすべきか
との問題提起がなされた。
また、他の出席者は、銀行との関係で赤字は困るという
趣旨の発言をした。
これらの発言を受けたこの打合せでの遣り取りの中で、
実績見通しと当初事業計画のギャップをどうにかしなければ
ならないと出席者は黙示に認識を共有した。
そして、出席者は、赤字を回避するためには、
平成20年3月期の売上高及び利益等の数値を改善する必要がある
と考え、その結果として不適切な会計処理が行われることとなった。
・・・・・・・・・・
【粉飾の手口】
①売上及び売掛金の繰上計上
②売上及び売掛金の架空計上
③売掛金の貸倒引当金計上の回避
この結果として、2008年3月の連結決算(特にPL)は、
“綺麗”な数値が並んだ。
<PL>(単位:百万円)
売上 12,800
経常利益 1,228
当期純利益 645
<BS>(単位:百万円)
売掛金 7,481
貸倒引当金 △612
しかし、本来の数値は、下記になる。
<PL>(単位:百万円)
売上 10,752(差異:-2,048)
経常利益 △808(差異:-2,036)
当期純利益 △3,468(差異:-4,113)
<BS>(単位:百万円)
売掛金 4,991(差異:-2,490)
貸倒引当金 △612(差異:0)
※ 有価証券報告書に基づいて作成
【いつもの手口】
粉飾の9割は、売上の過大計上と言っても過言ではない。
ゼンテックも売上を粉飾し、利益を捻出した。
その結果、本業における収益率を表す売上高経常利益率は
9.59%(本当は-7.51%)と超優良企業の数値となった。
ただし、売上が上がっても、それは未回収の売上である。
粉飾した売上額とほぼ同額の売掛金が計上されており、
収支という観点では悪化している。
アラーム分析(OX理論)では、経常収支比率を使って、
経常活動における現金収支を分析している。
ゼンテックは下記の通りの数値となった。
95.30%(本来は98.62%)
売上高経常利益率を見れば、超優良企業に見えるが、
経常収支比率の比率は100%以下であり、支出超過だったことが
一目瞭然だ。
※指標の概要
・売上高経常利益率
PLの数値に基づいて、売上高に占める経常利益の比率を表す
算式:経常利益÷売上高
★見方:数値が大きければ大きい程、利益率が高い
・経常収支比率
PLの売上高から販売債権などの増減を加味した経常収入を、
PLの売上原価から仕入債務・棚卸資産・減価償却の増減
などを加味した経常支出で除算した比率を表す
算式:経常収入÷経常支出
★見方:101以上が収入プラス、99以下で支出超過
【総括】
例年、年末の倒産は多い。
計画と実績が乖離している会社では、売上の“加工”について、
少人数の会議が開かれているだろう。
それゆえ、企業分析屋はPLの数値に惑わされることなく、
BSの売掛金や貸倒引当金等にも注目し、
“加工された売上と利益の化けの皮”を剥がさなければならない。
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
【編集後記】
10月8日に台風が直撃し、主要な交通手段がマヒした。
天災であることは間違いない。
ただ、数日前から台風直撃の報道はあり、
誰もが交通が麻痺する可能性(リスク)を感じていたはずだ。
それに対して、何も対処せずにいつも通り出勤し、
交通渋滞に巻き込まれて、右往左往するのは自業自得と言える。
実は、かくいう私も、台風当日、
朝起きたら雨も風も止んでいたので、
「大丈夫そうじゃん。」と
勝手に早合点し、いつも通りの時間に家を出た。
しかし、交通の麻痺に遭遇し、蒸し風呂のような電車に
30分程閉じ込められ、1時間半も遅刻してしまった。
私は、既知のリスクに対して「何もしないことを選択」してしまった。
何事も「何もしないことを選択する」のは楽だが、
安易な選択によって、悲惨な結果を招いても、それは自業自得と言える。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
本メールの情報は、お客様に対する情報提供を目的とするものです。
本メールの情報に基づいて行われたいかなる損失や損害について、
当社では一切責任を負いかねますのでご了承ください。
発行元 オックススタンダード(株) http://www.ox-standard.co.jp/