粉飾の経緯 -ゼンテック・テクノロジー・ジャパン- | OX理論が測る企業価値

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26年前、資金繰りに特化した財務分析手法が産声をあげた。
それは、【あらかん】から【OX理論(アラーム管理システム)】へと進化を遂げた。
【OX理論】を土台として、企業分析にいそしむALOX社専属ライターのメールマガジン、それに付随するこぼれ話を掲載。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2009.10.30
オックススタンダードメールマガジン 『 S T A N D A R D 』

粉飾の経緯-ゼンテック・テクノロジー・ジャパン- <編集:HNW>
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『日本航空(JAL)の再建???』


10月29日、日航グループは企業再生支援機構に対し、
再生支援を依頼した。

現状を俯瞰すれば、JALを民間企業と思う人は、少ないだろう。
半官半民に戻りつつある日本郵政グループに近い。

経営危機が訪れる度に、実質的な国の機関(つまりは税金)
による強力な公的支援がなされ、延命がなされている。



非常に短絡的な考えだが、全日本空輸(ANA)が
何らかの形でJALを支援すれば、
再建の可能性が高まるのでは!?と思う。

過去の事例として、アメリカではMicrosoftがAppleを支援した。
現在は、Appleは革新的なサービスを発表し、
Microsoftの強力なライバルとして復活を遂げた。


ライバル企業がライバル企業を支援するという選択は、時に有効だ。



それでは、OXメルマガ『 S T A N D A R D 』をお楽しみください。



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粉飾の経緯-ゼンテック・テクノロジー・ジャパン-
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オックススタンダード(株)   
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【報道概要】
2009年10月2日、元・大証ヘラクレス上場の
(株)ゼンテック・テクノロジー・ジャパンが
民事再生法の適用を申請した。

当該企業は、過去の不適切な会計処理が表面化しており、
2009年9月1日付で上場廃止になっていた。




【不適切な会計処理】
2009年2月17日付けで、
ゼンテック・テクノロジー・ジャパンのホームページには
『不適切な会計処理に関する調査委員会の最終報告について
http://www.zentek.co.jp/pdf/2009/news_090217.pdf
』が開示されている。


そこには粉飾に至った経緯及びその影響額が詳細に
記載されており、興味深い内容となっている。


特に、「不適切な会計処理等に至った経緯」については、
業績が思わしくない大多数の企業でも同様の会話がなされている
と思われるため、そのまま下記に抜粋する。




・・・・転記・・・・

3 不適切な会計処理等に至った経緯
(1) 平成20年3月期決算についての打合せ
A氏、C氏、D氏、E氏及びB氏は、平成20年4月16日ころに
行われた打合せの中で、複数の議題のうちの一つとして、
平成20年3月期決算の数値についてB氏が報告を行った。

この打合せにおいて、出席者は、平成20年3月期連結決算
の売上高及び利益等の業績見通し数値が思わしくなく、
事業計画との乖離が連結売上高で約17億円あることを
明確に認識し、出席者の一人からこの乖離をどうすべきか
との問題提起がなされた。
また、他の出席者は、銀行との関係で赤字は困るという
趣旨の発言をした。

これらの発言を受けたこの打合せでの遣り取りの中で、
実績見通しと当初事業計画のギャップをどうにかしなければ
ならないと出席者は黙示に認識を共有した。

そして、出席者は、赤字を回避するためには、
平成20年3月期の売上高及び利益等の数値を改善する必要がある
と考え、その結果として不適切な会計処理が行われることとなった。

・・・・・・・・・・




【粉飾の手口】
①売上及び売掛金の繰上計上
②売上及び売掛金の架空計上
③売掛金の貸倒引当金計上の回避


この結果として、2008年3月の連結決算(特にPL)は、
“綺麗”な数値が並んだ。
<PL>(単位:百万円)
売上     12,800
経常利益   1,228
当期純利益  645

<BS>(単位:百万円)
売掛金    7,481
貸倒引当金  △612



しかし、本来の数値は、下記になる。
<PL>(単位:百万円)
売上     10,752(差異:-2,048)
経常利益   △808(差異:-2,036)
当期純利益  △3,468(差異:-4,113)

<BS>(単位:百万円)
売掛金    4,991(差異:-2,490)
貸倒引当金  △612(差異:0)

※ 有価証券報告書に基づいて作成



【いつもの手口】
粉飾の9割は、売上の過大計上と言っても過言ではない。
ゼンテックも売上を粉飾し、利益を捻出した。

その結果、本業における収益率を表す売上高経常利益率は
9.59%(本当は-7.51%)と超優良企業の数値となった。

ただし、売上が上がっても、それは未回収の売上である。
粉飾した売上額とほぼ同額の売掛金が計上されており、
収支という観点では悪化している。



アラーム分析(OX理論)では、経常収支比率を使って、
経常活動における現金収支を分析している。

ゼンテックは下記の通りの数値となった。

95.30%(本来は98.62%)


売上高経常利益率を見れば、超優良企業に見えるが、
経常収支比率の比率は100%以下であり、支出超過だったことが
一目瞭然だ。



 ※指標の概要

 ・売上高経常利益率
 PLの数値に基づいて、売上高に占める経常利益の比率を表す

 算式:経常利益÷売上高
  ★見方:数値が大きければ大きい程、利益率が高い


 ・経常収支比率
 PLの売上高から販売債権などの増減を加味した経常収入を、
 PLの売上原価から仕入債務・棚卸資産・減価償却の増減
 などを加味した経常支出で除算した比率を表す

 算式:経常収入÷経常支出
  ★見方:101以上が収入プラス、99以下で支出超過




【総括】
例年、年末の倒産は多い。
計画と実績が乖離している会社では、売上の“加工”について、
少人数の会議が開かれているだろう。

それゆえ、企業分析屋はPLの数値に惑わされることなく、
BSの売掛金や貸倒引当金等にも注目し、
“加工された売上と利益の化けの皮”を剥がさなければならない。



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【編集後記】
10月8日に台風が直撃し、主要な交通手段がマヒした。
天災であることは間違いない。

ただ、数日前から台風直撃の報道はあり、
誰もが交通が麻痺する可能性(リスク)を感じていたはずだ。

それに対して、何も対処せずにいつも通り出勤し、
交通渋滞に巻き込まれて、右往左往するのは自業自得と言える。


実は、かくいう私も、台風当日、
朝起きたら雨も風も止んでいたので、
「大丈夫そうじゃん。」と
勝手に早合点し、いつも通りの時間に家を出た。

しかし、交通の麻痺に遭遇し、蒸し風呂のような電車に
30分程閉じ込められ、1時間半も遅刻してしまった。

私は、既知のリスクに対して「何もしないことを選択」してしまった。
何事も「何もしないことを選択する」のは楽だが、
安易な選択によって、悲惨な結果を招いても、それは自業自得と言える。



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