改訂ゴーイングコンサーン -対策評価が肝- | OX理論が測る企業価値

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26年前、資金繰りに特化した財務分析手法が産声をあげた。
それは、【あらかん】から【OX理論(アラーム管理システム)】へと進化を遂げた。
【OX理論】を土台として、企業分析にいそしむALOX社専属ライターのメールマガジン、それに付随するこぼれ話を掲載。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2009.7.31
オックススタンダードメールマガジン 『 S T A N D A R D 』

改訂ゴーイングコンサーン -対策評価が肝- <編集:HNW>
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「総量規制」


改正貸金業法の全面施行(2010年6月)が迫ってきた。
大きなインパクトをもたらすのは下記の3つである。

・「総量規制」の導入(貸付総額を年収の1/3以下)
・上限金利の引き下げ(29.2%→20%以下)
・業者の最低純資産額の引き上げ(2,000万円→5,000万円)



大手ノンバンク、クレジット会社などは上限金利の引下げを
前倒しで実施している。


しかし、総量規制については、2年前に金融庁が前倒しの方針を
出してはいるが、前倒ししているような話を聞かない。


“貸付総額が年収の1/3以下であること”を把握するための
システム構築に時間がかかっていると思われる。



これは言わずもがなだと思うが、改正貸金業法の完全施行に
より、下記の影響がある。


1.中小ノンバンクは、純資産額の増加と総量規制対応の
システム構築に対応できず、淘汰される。


2.金融機関から借入ができない中小企業の経営者は、
何らかの担保を提供しない限り、総量規制により年収の1/3以下
しか個人借入ができない。
緊急時に、個人借入で運転資金を賄って企業は、資金繰りに窮する。


中小企業向けのセーフティネットは、しばらく継続しなければならない。



それでは、OXメルマガ『 S T A N D A R D 』をお楽しみください。



<参照元>
日本貸金業協会「改正貸金業法」
http://www.0570-051-051.jp/contents/outline/1-1.html

第323回 あと1年?「改正貸金業法」全面施行でどう変わる?
http://www.eloan.co.jp/fp_advice.php?c=&num=323



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改訂ゴーイングコンサーン -対策評価が肝-
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オックススタンダード(株) 
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【ゴーイングコンサーン規定(継続企業の前提)とは】
2003年3月期決算より、監査人は企業の継続性につき疑義が
ある場合、財務諸表等に注記を記載しなければならない。


ゴーイングコンサーン企業は、いわゆる「危ない会社
(倒産予備軍)」というレッテルが貼られた。



【適用基準の緩和】
2009年3月期決算より、ゴーイングコンサーンの適用基準が
緩和された。


これまでは、赤字・債務超過や信用失墜など一定の条件を満たすと
ゴーイングコンサーンを財務諸表へ記載する必要があった。


新基準は、問題点に対して経営者が増資や銀行からの
資金調達などの対策をとり、経営が改善する見込みがでてくれば、
注記をつける必要がなくなった。



ただ、ゴーイングコンサーンの注記が必要なくても、
継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象等が存在する
場合には、有価証券報告書の「事業等のリスク」等にその旨を
開示しなければならない。
(「事業等のリスク」は監査対象ではない。)




【新基準の適用背景】
昨秋以降のゴーイングコンサーン企業の増加、
国際会計基準との共通化などに対応するために、
基準が緩和された。






【考察】
今回の改訂を大雑把に言ってしまえば、下記の通りである。
・対策(有)→ゴーイングコンサーンの指摘なし
・対策(無)→ゴーイングコンサーンの指摘あり。



ここで疑問が生じる。
ゴーイングコンサーンを指摘されるような事象が存在する場合、
それへの対策が無い企業はあるのだろうか?
(おそらく、無い。)


日本公認会計士協会では、以下の項目を
ゴーイングコンサーンとして例示している。



<財務指標関係>
・ 売上高の著しい減少
・ 継続的な営業損失の発生又は営業キャッシュフローのマイナス
・ 重要な営業損失、経常損失又は当期純損失の計上
・ 重要なマイナスの営業キャッシュフローの計上
・ 債務超過


<財務活動関係>
・ 営業債務の返済の困難性
・ 借入金の返済条項の不履行又は履行の困難性
・ 社債等の償還の困難性
・ 新たな資金調達の困難性
・ 債務免除の要請
・ 売却を予定している重要な資産の処分の困難性
・ 配当優先株式に対する配当の遅延又は中止


<営業活動関係>
・ 主要な仕入先からの与信又は取引継続の拒絶
・ 重要な市場又は得意先の喪失
・ 事業活動に不可欠な重要な権利の失効
・ 事業活動に不可欠な人材の流出
・ 事業活動に不可欠な重要な資産の毀損、喪失又は処分
・ 法令に基づく重要な事業の制約


<その他>
・ 巨額な損害賠償金の負担の可能性
・ ブランド・イメージの著しい悪化


上記の項目に該当したら、今まではほぼ自動的に
ゴーイングコンサーンの指摘がなされた。
しかし、対策があれば、指摘がなくなる。




【今後】
ゴーイングコンサーンの有無は、下記によって決まる。



経営者がゴーイングコンサーン対策の中身や
実行可能性について、監査人を納得させることができるか
どうかである。




考えすぎかもしれないが、これはやや危険をはらんでいる。
つまり、「経営者と監査人の癒着を生む土壌になり得る」と
感じるのである。



なぜなら、定量的に判断できる財務関連の対策
(増資や銀行の資金調達)ならば、監査人も対策について
判断ができるだろう。



しかし、定性的な要因が絡む営業やブランドに関する対策
については、監査人は内容や実行可能性について評価が難しい。



つまり、経営者が監査人を納得させるために
“あれやこれやの取引”を持ち掛ける土壌が存在するのではないか?
と思うのである。
(以前と違い、監査人への罰則規定が強化されているため、
“あれやこれやの取引”を受ける監査人はいない・・・。)




【総括】
企業にとって、ゴーイングコンサーンの有無は死活問題である。


ゴーイングコンサーンを指摘されると
倒産予備軍というレッテルが貼られ、
株価が下落し、
取引先から取引条件が厳しくなり、
金融機関からの融資も受けににくくなり、
最終的には資金繰りが苦しくなる。



2009年6月8日付けの帝国データバンクのレポートによれば、
昨年末は213社がゴーイングコンサーンを指摘された。
今年は185社が指摘されて、昨年に比べて28社減った。
また、2009年4月から5月までにゴーイングコンサーンが
解消された企業59社あった。



ゴーイングコンサーンが解消された企業の破綻は、
それは監査人が経営者のゴーイングコンサーン対策を
“過大評価した”と言えるだろう。(HNW)



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【編集後記】
業務範囲という言葉が懐かしい。
私は営業なのか、
総務なのか、
開発なのか、・・・。

正直、どれもしっくりこない。

あえて言えば、「アラーム管理システムの継続及び向上」が
業務範囲だ。
それゆえ、営業も開発(コーディングは除く)も総務も
何でもやる。

シンドイ業務ではあるが、嫌ではない。
懸念は、仕事によって身につけることが可能な専門性が
なくなることだが、これも仕事のやり方と気概次第だろう、
と思う日々です。(HNW)


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