財務制限条項が誘発する黒字倒産 | OX理論が測る企業価値

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26年前、資金繰りに特化した財務分析手法が産声をあげた。
それは、【あらかん】から【OX理論(アラーム管理システム)】へと進化を遂げた。
【OX理論】を土台として、企業分析にいそしむALOX社専属ライターのメールマガジン、それに付随するこぼれ話を掲載。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2009.4.30
オックススタンダードメールマガジン 『 S T A N D A R D 』

財務制限条項が誘発する黒字倒産    <編集:HNW>
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予想外と言っては何だが、上場企業の倒産件数の勢いが
緩和された。


世界中の政府や公的機関による
“流動性確保という名の資金注入”により、
“一時的な止血”がなされたと言えそうだ。


現状は、企業に対して“絆創膏(資金注入による止血)”が
貼られた状況である。

そこからカサ蓋ができ、
新しい細胞が生まれ、
最後に絆創膏を剥がすことができるかは、
各企業の経営に依存する。


しかし、政府の“絆創膏”は、大企業を中心に
貼られているため、中小企業は厳しい業況であることには
変わりはない。

東京商工リサーチによれば、
2009年3月度の全国企業倒産件数(負債額1,000万円以上)は
1,537件となり、6年ぶりに1,500件を上回った。

セーフティネットでも救われない企業は多い。


それでは、OXメルマガ『 S T A N D A R D 』をお楽しみください。

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財務制限条項が誘発する黒字倒産
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【報道概要】
2009年4月24日、東証2部上場の株式会社中央コーポレーションが
民事再生を申請した。
米国に端を発する不動産不況の影響を受け、投資用不動産の
販売不振に陥り資金繰りが悪化したという。



---- 分析情報 ----
【会社概要】
社名        株式会社中央コーポレーション(東証2部上場 )
証券コード     3207
業種        不動産開発
従業員数      87名
所在地       名古屋市中区栄2-5-1
監査法人      あずさ監査法人


【破綻情報】
破綻日       2009年4月24日 民事再生法申請
負債総額      約340億円


【OX理論で分析】
OX格付       BB 【23】(2008年5月単独決算)

【分析表1・7】
http://www.ox-standard.co.jp/pdf2/cyuuoucorp.pdf
※連結の決算書が2008年の1期しかないため、単独決算で分析
※分析表をご覧になれば、2006年から財務内容が急激に
悪化していたことが分かるため、内容について解説はしません。



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【黒字倒産】
データを検証せずに意見をするのは避けたい所だが、
黒字倒産を目にする機会が増えた。

特に不動産・建設系企業にそれは多くみられる。

なぜか?



【多額の借入金に依存】
多くの不動産・建設業は、事業継続のために多額の資金が必要だ。
株式市場や第三者割当増資、金融機関から借入により、
必要な資金を調達している。

中でも、借入に依存する企業は多い。

しかし、金融機関もリスクを低減させてから融資する。
貸倒れリスクの低減化の“エース”と言えるのが、
『財務制限条項』である。



【財務制限条項とは】
『通常、金融機関が債務者に対して貸付を行う際に、
その契約において、債務者の財政状況が一定条件以下と
なった場合には、債務者は期限の利益を喪失し、
金融機関に対して即座に貸付金の返済を行わねば
ならないことを約する条項を指す。


財務制限条項の条件例としては「経常利益の黒字維持」と
いった損益計算書に関するもの、
「純資産をXX円以上に維持」といった貸借対照表に
関するものなどがある。』(参照元『exBuzzwords』より)



【黒字でなければ借入返済】
大抵の財務制限条項には“黒字の維持”とある。

損益計算書において、赤字の場合、
金融機関は貸付金を回収する権利が発生する。
一方で、債務者である企業は多額の返済を強いられることになる。



【総括】
多額の借入金に依存する企業は、財務制限条項に
抵触するのを避けるため、損益計算書の黒字を目指す。

しかし、“無理な売上等”によって、PLを黒字にすることが
できても、キャッシュフローや経常収支を見ると赤字に
陥っているケースが多い。

最終的には、資金繰りに窮して、黒字倒産する。

財務制限条項(黒字維持)は、
黒字倒産の原因の一つと言えそうだ。





ちなみに、4月27日に事業再生ADR手続(私的整理)を申請した
コスモスイニシア(旧リクルートコスモス)も黒字であり、
財務制限条項に抵触していた。(HNW)



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【編集後記】
4月13日、事務所を移転した。
私がオックス情報に入社してから、事務所は5回変わっている。

≪事務所の変遷≫
1.御茶ノ水
2.小網町
3.築地(聖路加)
4.浜松町
5.新橋


5回の移転を経て思うのは、
「上場まもない頃(御茶ノ水時代)に戻りつつあるな」ということだ。

当時は、御茶ノ水の質素なオフィスで、
新規投資も抑え、あらかんやアラームのユーザーの
顧客満足度を高めることに経営資源を使っていた。

そういった意味で、今回の移転は“効果的”と感じている。

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