最後のページ。
そこには、母の字でこう書かれていた。
「私に何かあったときに、健一と由美へ」
その下には、
銀行。
保険。
年金。
不動産。
毎月の支払い。
必要な連絡先。
思っていたより、ずっと細かく書かれていた。
「お母さん、これ……いつから?」
「お父さんが亡くなったときよ」
母は言った。
「お父さんのことで、私も分からないことがいっぱいあったから」
私は黙ってノートを見つめた。
母は続けた。
「だから、私が分からなくなったときに、あなたたちが困らないようにと思って」
その言葉を聞いて、胸が詰まった。
母は、自分のためだけに書いていたのではなかった。
残された家族のためだった。
私はノートを閉じた。
そして母に言った。
「お母さん、これ、一緒に整理しよう」
「うん」
母は笑った。
帰り道、私は考えていた。
お金の準備というと、
貯めること。増やすこと。保険に入ること。
そんなことばかり考えていた。
でも、本当に大切なのは、
「自分のお金を、自分も家族も分かるようにしておくこと」
なのかもしれない。
母のノートには、まだ一つだけ空白のページがあった。
そこに何を書くのか。
それは、次の日に家族で話し合うことになった。
【物語完】
次回は、この物語をFP・行政書士・保険募集人の視点から考えてみます。