父の書類を探すことになった。
古い引き出し。
書類ケース。
押し入れの段ボール。
出てくるのは、昔の年金通知や領収書ばかり。
すると母が、
「あら、これ……」
一枚の保険証券を見つけた。
父の生命保険だった。
「これ、まだあるの?」
「分からない。お父さんが入ってたのは知ってたけど……」
保険会社に確認すると、すでに契約は終了していた。
さらに別の証券が出てきた。
今度は母自身の保険だった。
「お母さん、これ毎月いくら払ってるの?」
「……知らない」
私は少し驚いた。
保険に入っていることは知っている。
でも、
「何のための保険なのか」
「いつまで保障されるのか」
「いくら払っているのか」
までは知らなかった。
その日の帰り道、私は考えた。
お金の問題って、
「いくら持っているか」
だけじゃないんじゃないか。
――でも、まだ本当の問題には気づいていなかった。