幾年月
私が、ここに大きな穴を掘ったまま放置しても
落ち葉が
雨が
風が
何れそこに穴があったのかすらも判らないほどに
埋もれてしまうのでしょう
誰かが伝えねば
その意味すらも・・・
足元から崩れた安寧は
悲鳴と共に押し寄せた
怪音は何千何万の兵士の足音にも似て
疲れの意味を飛ばすほどに
駆け上がる
満ちていく潮に取り残された最後の老人の顔
崩れ往く窓から手が伸びて沈んだ
車の中で固まったまま
人形のように飲み込まれるのっぺらぼうな男女
今となっても
過ぎ去っていく最中に
術などあるものか
夢と現実の境界を失った夜
あの日もあの火を眺め
寒さとも恐怖ともとれる震えで
過ごした何よりも長い一時
一時の気休めに横になるころに
ようやく
脳裏に浮上してくる
耳の奥に押し寄せてくる
瞼の裏に映し出される
その後悔
搔きむしるだけの
抗いようのない苦しみは
ありとあらゆる苦しみとも違う
逃げ場を必死に探して
閉じ込める日々
生きる
とは・・・
そう疑う人生の始まりだった
奥の奥に引きこもり
見ないように
聞かないように
全てを閉じて
ようやく落ちついたころ
この足は
ふらりと
私を連れてきた
ゆらりと視界がゆがむ
大丈夫
地面はしっかりとある
震えた唇からは
ただいまーー
と
囁き程度の声で
大切な名を呼んだ
大きな空だった
広い海だった
大好きな町で
大好きな人がそこに在った
でも
それがわからないほどに
町ができていた
その爪痕を記す看板がそこらかしこに
あって
何かに蓋をした
私の知らない故郷が広がった
そりゃ
怖くないはずだ
あのころと・・・
違う町だものね
by梟霊