独り語り | 梟霊のブログ

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適当に詩をUPします。
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山菜大好き
ハーブ大好き
とことん変り者なため・・・
絡み辛いこと必死
静かに、生暖かく見守ってください

独り語り




僕は、忘れていた
いつからかと問われても
定かではないけれど
きっと、
あの考えなしに笑うことが出来たころから
だろう・・・
独り
あの山の頂を目指す
何のために
どうして
そんな問ばかりを投げつけてくる
我儘な自影を
部屋に残して
この足は
歩き出した
どうしてだろう
どうしてだろう
吐く息は荒く
幾度となく脹脛はつっても
止まることはなかった

聞き慣れたクラシックに
こころと想いを乗せて
僕は歩く
燦燦と降り注ぐ陽の光は
紅葉真っただ中の樹々の葉に染まり
一面を錦色に輝かせ
見渡す限り
金銀財宝の海を泳いでいるように
錯覚させる
立ち止まるものを幾度追い越したことだろう
見渡すものを幾度横切ったことだろう
振り向きもせず
魅入ることもなく
ただ頂だけを見据え
トンタン
タントン
トントンタンと
登っている
苦しい
辛い
でも顔は笑っているのが
解っていた

息が白づむ
陽が少し傾くころ
最後の山小屋は後方遥か下
震える足は一歩
動かぬ足は一歩
また、一歩
空と大地の境界を目指していた
もう、流れる音楽も吐息の雑音も関係ない
ただそこに
ただ、其の頂に
立ちたいがため
僕は、進んだ
殺風景な岩肌に噛みつく
寂しげな高山植物を撫でながら
その
最後の瞬間を
目の当たりにした・・・

其処は僅かな場所だった
誰かがたてた石碑に
誰かが作った祠
誰かが作った看板に
誰かが置いた小さな酒と一円玉の山
其処が頂
其処が山頂
酷く澄んだ空は
文字通り何もなく
ただ、蒼さだけを
清々しく見せつける
僕は、そこで叫ぶこともなく
感動もなく
ただただ、震えながら
達成感という疲労の中に
沈んでいった・・・

遠くの一つ山の影に
陽は落ちて行く
山も空も
黄金ではなく
朱色に染まり
どことなく寂しく
どことなく熱い
輝きを見せつける
誰一人として
追い越すことのない
たった一人の帰路
振り向いたそこには
先ほどまで立っていたあの場所が
遠く遠くに見えるほどに
小さく見えた
こころは燃える
何かに火が付いたかのようだ
ゆらゆらと
ゆらゆらと
この足取りのように
力は無くとも
無心の中の喜びは
あの真っ青な世界と共に
焼き付いて離れず
しっかりと抱き付いて
離してはくれない
あぁ・・・
きっと
未だ僕の魂は
あの場所にあるのだ
喜びと儚さに舞いながら
見る事の叶わない
夜の星々を眺めるために
あぁ・・・
きっと
未だ僕の想いは
あの場所にあるのだ
切なさと言い表せない何かをもって
あの空の先へ
手を振っているのだ

出口
薄暗いその場所は
何故か人々の声が
賑やかに飛び交っている
僕は、その中を
唯一人の人間として
通り抜け
独り静かに
家へと下る
半月少し前の
月の光を背に
車のライトが右へ左へ
目の前のテールランプが右へ左へ
ふと
今の今までが
夢の中だったのではないかと思った
だが
微かに残る
頬の肌寒さが
瞬き一つの刹那であっても
その漆黒の中に
かの頂の姿を描いて見せたのだった
その度にまた
其の旅に、また
心躍る
僕が居て
そこを目指す
僕が居た





byキケロ