しみじみとした秋の暮れ
小肌寒い風が時折駆け下りて
パリパリの肌を突く
山影の村から
朱く染まる空を眺めた
日に日に深まる
もみじの紅の色
其処に想いを馳せば
深々と刻む渓谷のような皺の数だけの
物語
褪せて、小道を転げまわる落ち葉と共に
あの頃は
あの頃は
と繰り返し
孫たちの輝く瞳に己を映した
あぁ・・・
夏の緑が嘘のよう
先立つ君の後ろ姿を忘れず
笑い合うあの日々は
もう、帰っては来ない
愛し合うことに甘酸っぱさはなく
思い合うことに瑞々しさもなく
想いに更ける度に鮮やかに彩る
紅の色だけが
風に揺られている今日この頃
あの頃の焔は
心に焼き付いたまま
あの頃の熱気は
魂に刻まれたまま
今もなお
空っぽの空に
高らかに揺れている
弱音を吐くたびに
完結した恋物語の
欠片を抱え
また一緒になりたやなぁ・・・
と、寂しげに呟くのだ
恋に、恋しく
恋に、焦がれて
老けて
更けては
老いて
追いかける
人は、なんと欲張りなことか
未だに、私は
恋い焦がれているようだ
老いて旅立った君にも
若く思い出の中で笑う君にも
いつかもう一度
いつかもう一度と
人知れず目を輝かせて
私という人生の夕時に
紅葉のように赤く
朱く
この頬を
染め上げてしまう
byキケロ