流れ、凪がれ、薙がれ、和がる
1.流れ
僕は
幽霊が怖かった
悪霊が嫌いだった
だって・・・
独りで寝ていると
足を持ち上げて
部屋中を引きずり回すんだ
覆いかぶさって
じっと覗きこんでくるんだ
耳元で何かささやいてくるんだ
突然、悲鳴を上げたり
物を飛ばしたりするんだ
正直
鬱陶しい・・・
あれだけ干渉してくるのに
こちらからは
殴ることも
捉えることも出来ない
だから
大っ嫌いだ・・・
2.凪がれ
僕は、雨の日が嫌いだ
雨の日の夜も嫌いだ
だって・・・
いつもは隅っこに居る
何か変なものが
その水を伝って
歩き回るんだ
見たことある?
彼岸花の行列に沿って
人の手だけが
まるで花のように開いて
立ち並んでいる姿
街灯に照らされて
ゆらゆらと揺れる姿
その手が
じっと僕が触れるのを待っている
誰もそれを信じない
それが雨の日になると
そこら中に生えてくる
だから・・・
嫌いなんだ
3.薙がれ
僕は、彼岸だの命日だのが嫌いだ
墓石の行列を見るのも嫌いだ
だって
人ではない人型の何かが
頭だけ持ち上げて
ぐるぐると辺りを見渡すのだもの
まるで
死んだことに気が付いていないような
死んでしまったことを否定しているような
奇妙な姿
こちらからちょっかいを出さない限り
そこから動かないけれど
夜、迎え火が消える頃
夜、送り火が消える頃
そして、絶やさずにいた蝋燭が途切れた頃
決まって
ひたひたと
ひたひたと
誰かの家の前を歩き回る
物色しているようで
そうでもないような
真っ暗な中で異様に目立つ
真っ黒な影
目だけがくっきりと浮かび上がり
瞳孔が開き切った視線を
その家々に向けている
なんどか目が合ったことがあるけれど
ひっひっ、と小さく声を上げるだけで
何もしてこない
気持ち悪く、煩わしい
だから
嫌いだ・・・
4.和がれ
僕は、人混みが嫌いだ
集まる場所も、集中する場所も嫌いだ
だって
人以外も紛れ込んでいるから
面白がってどこかに足を突っ込んだのだろうか
何かに縋られているのだろうか
恨まれ
狙われているのだろうか
気が付かないだけで
要らないものまでも呼び寄せて
たまり場になる
だから
だから・・・
誘われても
行きたくない
行きたくもない
嫌いなんだ・・・
でも・・・
なんだか変なんだ
僕
おかしなこと考える
向こうだけ干渉してくるのずるいよね
向こうだけ触れて、壊して、殺してくるって
不公平だよね
だって
社会には
殺しちゃいけない、奪っちゃいけない
なんて
いけないことだらけの決め事があるのに
向こうは守る必要ないなんて
在り得ない
だったら・・・
こっちも向こうを・・・
同じように・・・
時々ね?
枕元とかに
悪戯しに来る子がいるの
でも、この前
この手で髪の毛を掴んで
力いっぱい床に叩きつけたんだ
夢だったのかな・・・
でもでも
朝ね?
ちゃんと在ったんだよ?
掴んだ感触と叩き付けた感覚
それと、誰のか判らない爪痕みたいなの・・・
by死神キケロ