幻覚
ふわふわと
降り積もっていく雪
何も考えなければ
気づきさえしなければ
朝焼けに燃える
その姿は
ただ、ただ、ゆるりと流れる
美しい
一時であっただろうに・・・
決して解けぬ雪を
私は知っている
一面を白化粧しているそれは
灰
夕焼けに燃え
細かな黒い影を見せつける
容赦なく
降り積もる
ジリジリと皮膚を焼き
削ぎ落し、剥がれ落ちる
痛みが痛みを越えて
何も無くなれば
倒れ逝く木々のように
恐れなく、つ伏せになり
私のように仰向けに横たわることは
二度とない
鼾もなく
安らかでもない
呻き声すら上げず
太陽が沈み切った後の
私の泣き声だけが
星空に流れたのだ
あぁ・・・
あぁ・・・
と
彷徨える影
生きているのか
魂だけとなったのか
判らなくなっていく意識
朦朧とするなんてものではない
惨劇が惨劇ではなく当たり前になり
慣れ
当然となった後は
感覚という言葉も馬鹿らしくなるばかり
空腹すらも
快感に変わるほどに
狂気に満ちて
私と同じようなものが
面と向かってぶつかれば
得体のしれない獣同士の
滑稽な殴り合いだろう
だが、それはない
それすら出来ない
干からびた目玉が転がり
まるで野の花のように咲き誇る光景
正常ならば
地獄に落ちてしまったと
絶望するだろうが・・・
朝陽と共に映り込む
あの世界に居た私には
美しくて
しょうがなかった・・・
ふわふわと
降り積もっていく雪
何も考えなければ
気づきさえしなければ
朝焼けに燃える
その姿は
ただ、ただ、ゆるりと流れる
美しい
一時であっただろうに・・・
あの時
あの頃の情景に
重なっては
戻ってくることを繰り返すようになり
もはや
その感情も感動も
湧き上がることはない
在ると言えば
未だ身に染みる
朝の冷え込みのような
抓るような悲しみばかり
消し去りたい
消え去りたい
人生という
ただ一本の道のりを
やり直せるのならば
私は、何度だって
喜んで毒すら口にしてしまうだろう
溶岩の中だろうと飛び込んでしまうだろう
それが
出来ないからこそ
こうして
不自由な体となって
無駄に生きて
あの頃を塗りつぶしてくれる
一瞬を
例え幻覚であったとしても
探し
求めているのだ
by銀翼のキケロ