希望
帰路に就く
全ては凍てつく白に飲み込まれ
列を成す箱は
道という未知の世界に立ち尽くす
バタバタと服を揺らし
サクサクと歩く私の足取りは
そんな彼らを馬鹿にすることなく
進む
なぜなら
未知の世界に在り
最も危険な場所を進むのは
他でもない
私
此処がどこで
どこまで来ているのか
目印もなにもない
頼みの綱のスマートフォンも
この視界では使えるものでもない
ただ、嘲笑う風と雪を除けながら
この先と信じて
黒い影を
左右に揺らした
白は青く
青は黒くなる
ぼんやりと中空に列を成す灯は
その行く手を指し示す
どこを見ているのかわからない
二つの眼が
時時、足元と私を照らす
生きた心地のしない
この時間
この世界
あぁ、寒さが私の頬を切りつけていなければ
とうに心折れて
進むことを諦めていただろう
あぁ、あの目的がなければ
この足は、動き続けることを拒んでいただろう
あの薄明りのように
ぼんやりと心に灯る輝きが
熱を帯び
突き動かす力となる
雪は、まだまだ降りしきる
風はさらに唸り声をあげて
行く手を遮る
最早、箱の行き来もなく
灯も
後ろに過ぎて
遠のいていくもので最後だ
後は
後は・・・
ただ、あそこまで
ひたすら
歩くより、他はない
長く
長く
歩いた
歩いて
歩いて
歩き通した
ふと、視界に入る僅かな灯火
なんだか揺れ動いているような・・・
近付いて
近付いて
近付いて、驚いた
見知った顔が、寒そうに
嬉しそうに、心配そうに
暗闇から飛び出してきたのだから
さぁ、すぐそこよ?
早く行きましょう
さぁ、もうすぐよ?
早く、帰りましょう
小さな手と大きな心が
家という
温かな場所へ導いた
静かな空間
明るい世界
穏やかな温もり
眠れる愛は私の横で
確かに揺れる
希望
希釈の希に望む
しかし、その薄い望みが
めんどくさがりな私をここまで導いた
何とも言えない感情に
笑うでもなく
もどかしくなるわけでもなく
唯、頬を緩め
その揺り籠を創る人と
見つめ合うだけだった
by銀翼のキケロ