華陽
最果てに在るはずの人生の終わりが
数か月先に見えた
病院の無慈悲な白い輝きの中
黒い影は、俯きながら静かに笑う
泣きはせず
不安げに寄り添った私へ
ただ頑ななまでの笑顔を向けて
母には、内緒だと
言っていた
秘密を抱え
日々を過ごす
何も知らぬまま
母の時と季節は巡る
父の背中は、いつもと変わらない
が・・・
どこか
なにか
痩せ細っていくように
思える私が
見送っていた
母に隠すことが
出来なくなった日
泣き崩れた体を
骨と皮の父が支える
私には
まだ理解できない
私には
まだ、飲み込めない
また、いつも通り
立ち上がって
帰ってくるのだと
思っていたからだ
だからだろうか
あの日に
投げかけた言葉が
どれだけ重く
どれだけ無慈悲なものだったかを
知らない
その笑顔は変わることが無い
朝陽を浴びて
夕陽を浴びて
月陽を浴びても
変わることはない
刻まれた死
深く、深く、どこよりも深く
焼き付いた別れ
遠く、遠く、どこよりも遠く
私の中で手を振り続けている
母が、その鐘を鳴らし
お香の香りで満たすたびに
あぁ、居ないんだ
そう思った
幾度となく繰り返す年月
父の道も踏み越えた
想いの他早い気もするし
長かった気もする
老いて、小さくまるまったかのような母も
おそらく、理解しているのだろう
日に日に
あなたのそばで
日向ぼっこをするようになった
眠るようになった
私はそれを眺める
いつか
母もいくのだろう
私の知らない
どこか、ずっと、遠くという
曖昧な世界へ
今思えば
永遠に続けばいいなと願うことは
幸せである証拠
苦しくても悲しくても
続けばいいと思えるのなら
今は、少なくとも幸せなんだ
母は
読経の中で笑い続ける
たかが紙で出来た花草に囲まれて
別れの最後
太陽を見上げた
七色の虹がはっきりと其処に在った
天も別れに添える
華陽をくれたのだろうか
と
考えても仕方のないことを
あぁ、こうなるのか・・・
あぁ。こうなってしまうのだなぁ・・・
いつまでも
考え続ける
多分
いつか来る
私自身が立ち止まるその日まで
ずっと
by銀翼のキケロ