面影
小さなお前を
手の平で撫でたこと
覚えているか?
私よりずっと後に生まれたくせに
私よりずっと早く逝なくなった
小さな家族へ
小さな寝顔へ
そう、愚痴をこぼしていた
小さなお前を
胸の中で寝かしつけたこと
覚えているか?
私よりずっと後に家の中に居座り
私より、いや家族の誰よりも早く出ていった
小さな相棒へ
小さな笑顔へ
そう、囁いていた
淋しさと
感謝と
思い出が
透明な何かとなって
止めどなく流れたあの日
火の中へ消えて
灰となって土へ返したあの日
私は、未だに覚えている
冷たい体を撫でた感触も
それを持ち上げた重さも
忘れずに
この身体
この心に刻んでいる
細い路地を近道と思って
通ったそこで見つけた
ありふれた箱の中
人懐っこいその顔が
仕草が
遠い遠い思い出の中の
あいつの面影に重なった
込み上げた嬉しさと
複雑な感情の中
思わず立ち止まり
一撫でした
だが、その先は躊躇った・・・
ごめんなと謝って
私は、背を向け走り去った
その日
久々にお前の夢を見た
夢の中で撫でながら言った
絶対あいつのせいだってな
でも、本当にお前に似てたんだぜ?
ん?解るか?
そーか、そーか
夢の中で、まるで他人事のように聞こえる
自身の声は、喜びに満ちて
そして、どこか後悔という影を落としているよう
でも
知ってしまった
失う重さ
それが、私の手を
そっと奥へ引っ込めてしまったのは事実
もし・・・
それでも、抱き寄せる勇気があったなら
きっとあの子は
今頃
私の枕元にでも寝息を立てているのだろうか・・・
by銀翼のキケロ