公園の貴婦人
街中の小さな公園
樹々が数本と
石畳の道が東西南北に交差し
そのやや中央に
木で出来たベンチが一つある
灰色の中に在る
オアシスのような場所には
なぜか
人影が少ない
いつもきまって
唯独りの老婆が
夕暮れ少し前に訪れて
黄昏時まで読書をしたり
居眠りしたり
空を見上げたりしている
その姿は、どこにでもいるようなものではない
絵本の中から飛び出してきたような
静かで凛として、きっとそう
高貴な方と想えてしまうような
空気を携えていた
風と戯れる木の葉
空を白く塗りつぶそうとする雲
嬉しそうに
どこか寂しそうに
微笑みながら見つめていた
私は、時を遡ってしまったのだろうか
不意に訪れた
あまりにも美しい夕焼けの中に佇む
その姿
そこだけ
その場所だけが
遥か昔の異国を思わせる
そして、あの姿が
魔法が解かれたかのように
美しい女性に変貌している
なんなのだろうか
荘厳な別世界のような
一枚の絵を見ているかのような
どことなく
幸せな時間が溢れている
もしも
この私が、その中に入れるとするならば
考えるだけで笑えるだろうが
貴族
そう
貴族の礼服でも着て
声を掛けなければいけないだろう
だが、それは無理だ
なぜなら
誰もいないはずの
彼女の隣には
すでに
素敵な王子が、微笑みながら肩を寄せているのだから
by銀翼のキケロ