灰色の世界
誰もが眠る闇の世界
蠢く影が唯一つ
風の音色を聞いている
雪の小言を、聞いている
険しい顔に
龍の吐息のような
白煙を吐き出して
突き進む
何かを合図した
四つの明かりが灯り
列を成して歩み出す
轟々と雪の波を作り出し
船の様に上下に揺れながら
影の隣を過ぎて
それぞれに動き出す
それはまるで妖精の様に
ゆらゆらと揺れるようでもあり
つがいで踊る小鳥の様にも見えた
影は、暗闇の中でさらに黒く染まり
蠢いている
紅の輝きを持ち
四つの光を操っている
それはまるで
オーケストラを率いる指揮者のよう
それが何を刻み
何拍子なのかは解らない
でも、中心にいて
彼らを、楽しげに舞わせているのは確かだ
あの空は、目覚めだす
あの空は、目覚めだす
白く染め上げた大地を
見下ろすために
無垢なる世界を歌うために
目を覚ます
だが、風は、重なり合う音を荒げ
雪もそれにつられるかのように
大声を轟かす
何もかもを飲み込んだ
その中で
全てが灰色の世界の中で
あの影は
あの灯は
未だ、ゆらゆらと踊る
その切れ味は増し
その優雅さは幻を帯び始める
空は、あくびをした
大きな、あくびだった
束の間の静寂に
静かに聞こえる妖精の足音
黒い影は、白く染まり
朝日によって
黄金に染まった
浮かび上がるそれは
何かに安堵したような
笑みであり
光を失った妖精の跡には
深く眠る重機の姿があった
人々が動き出すころ
彼らの姿はもはやなく
どこまでも続く道と
確かにここに居た証として
雪の山が
帯状に、どこまでも
どこまでも続いていた・・・
by銀翼のキケロ