そうして僕は、百億の星となる
長くは、生きる事ができない
長くは、生き続ける事ができない
僕は、そういう運命だったらしい
真っ白な世界しか知らない人生
メトロノームのような一定のリズムの機械音
いつも大きな窓の向こうで二人並んで
透明なカーテンの中に向かって
手を振っている
固まった笑顔で
僕は、どうして
こんな風に生まれたのだろう
どうして
こんなところに生まれてしまったんだろう
生きていること自体が
後悔であり
苦痛であり
懺悔の日々
互に見詰め合う絆の先に
募る悲しみが
やがては、重い涙となって
互いの頬を伝った
あぁ、僕はもう、大好きな
ママと、パパにも触れない
あぁ、僕はもう、大好きな
パパと、ママを抱きしめる事ができない
多分、死んでしまうその時まで
生きる希望は
空っぽのまま
チクタクと刻む時の流れ
無責任な言葉より
無責任な励ましよりも
せめてもう一度
せめて、もう一回
大好きな、大好きな家族に
触れて
抱きしめて
逝きたかった・・・
夢を見た
昔々
草原を駆け抜けた日の夢だ
必死で追いかける二人の背中が
とても大きかった
ほら、早く
ほら、もっと
遠くから叫んでいる声が
とても、優しかった
でも今は・・・
途端に辺りは真っ暗になり
小さな光の粒が無数に輝きだした
苦しかった
切なかった
悲しかった
それがすっと暗闇に溶けて
反対に
なんだか落ち着いた居心地が
心を満たす
ゆっくりと舞い上がる粒を見て
あぁ、綺麗だな・・・
そう、呟いた僕が、居た
掴めないかな、これ。と
おもむろに伸ばした手が
無くなっていた
足を見た
無くなっていた
ゆっくりとじんわりと
散っていた
あぁ、そうか・・・
この光、この粒の輝き
みんなみんな、僕から零れていたのか
終わり、なんだね?
もう、終わっちゃうんだね?
そうなんだ・・・
想いの限り叫び
想いの限り泣いて
空っぽになったころ
その涙も拭くことができなくて
ただ、舞い上がる光を眺めた
懐かしい星空が其処に在る
様な気がした
うすぼんやりとしか覚えていないけど
息を白くさせながら
見た様な、見なかったような・・・
そうして僕は、暗闇の中に消えた
そうして、僕はこの世界から消えた
そうして僕は僕として終わり
8ミリカメラの中でしか
生きてはいない
あの夢は何だったのだろう
雲を背に漂いながら
青空に隠れることのない星を見ていた
あの粒は、どこへ行ったのだろう
真っ青な星を背に
消えることのない星々を見渡していた
僕は、こうして僕を認識している
なのに手も足もなにもない
遮るものもなく
ゆっくりとどこかを彷徨い
果てることなく
ゆったりと何かを想う
思い返すたびに
忘れていき
最後に浮かんだ
大切な何かも
ふっと忘れた
忘れれば忘れるほど
浮き上がり
銀色の星へ近づいていった
あぁ、最後の思い出は何だったかな
何だっけ
何か、在ったっけ
何もない
何も・・・
遠くから眺めた別の何かが
小さな小さな光の一粒を救い上げた
愛おしそうな眼差しを向け
ぎゅっと抱きしめた後
勢いよく
さらなる果ての星々に向かって
放りなげた
その一粒は一瞬で見る事さえ叶わなくなり
あの百億の星の一つとなった
静かに漂い
静かに輝き
永遠とも言える時間の果てに消える
唯一つの星たちの
一つになったのだ
そして、いつか
いつか誰かが
君を見つけ
君に新しい名前を付け
世界中の人々からその名を呼ばれる星になって
生きる事ができなかった分以上に
愛されれば
いいなぁ、と想う・・・
by銀翼のキケロ