白を告げる
高校最後の夏
君を前に
誰もいない校庭の隅
大きな桜の木の下で
片言、一言ずつ
伝えた
放課後
君に伝えた
想いの全て
二人だけの空間が
黄金に輝く
太陽を背にする君と
正面に受ける私
全て伝えたはずなのに
次から次へと
溢れ出る我儘と不安
ほろり、ほろりと
零れ落ちていく
ねぇ、今君は、笑っているの?
それとも
困っているの?
高鳴る鼓動
対して
静寂が流れる
君の影が、ゆらりと動くたび
びくんと跳ね上がる肩
多分、返事をくれるまで
そんなに時間を掛けていないはずだ
でも
長くて、長くて、長かったんだ
景色だけは普通に動いているのに
この場所だけが
異常に時の流れが遅い
あぁ、どうにかなってしまいそう
ごめん・・・
君に、想いを伝えた
伝わった後は
フラれてしまった
痛くはないのに、痛い
涙だけが、未だに純粋な想いを
抱えて流れてくる
全てを思い出にするために
流れていく
もう君の影はいない
私にも触れず
足音だけを聞かせて
きっと振り返ることもなく
去っていった
残された私には
あの最果てに沈む潤んだ太陽と
同等の色をした両の眼だろう
寝る前
君の思い出を見つめた
古いアルバムと
あの後で、靴箱に入っていた
私のラブレター・・・のしおり
すこし色褪せて
もうこんなになってしまったんだと感じさせてくれる
少し、背も伸びた
あの時よりきっと魅力だって・・・
時々、そんなことを考えている
もう、逢うこともないはずなのに
未練たらたらに
自分の胸に聞いているんだ
同窓会
久々の再開の中に君はいない
友達との会話の影で
つまらなそうにグラスを傾けている
すみません
この方、ご存知でしょうか・・・
不意に声を掛けられた
知らない人
少し、他のみんなより若い人
ただ、持っていた写真は
確かに私があの人と映っているもの
恐る恐る返事をする
そうですか
でしたら、これを
兄から、預かっていたものです
それでは
私は、これにて失礼
渡されたモノ
確かに君の名前
しかも、生意気に英語の筆記体
ただ、大きく書かれた私の名前の横に
ひっそりと寄り添うように
書かれていた
それ以外は、書かれていない封筒
あれからちょうど十年・・・
何となく、察知した
どうせ、今こんなに幸せなんだとか
そんなものだろうと
久々の再開も終わり
帰路につく
家まで残り数百メートル
何となく、待ちきれなくて
あの封筒を取り出し
最後の街頭の下で開けた
また写真だ
たった一枚入っていた
しかも、フラれてから
丁度一年後
病院のベットの上で
鼻にチューブ
抜け落ちてブチ模様の頭
がりがりに痩せ細った顔で
笑っている
あれ?
誰?この人
写真の裏に
私です、驚かせてごめん
でも、君のおかげで少しだけ
長く生きれた
十年後の君へ
ありがとう
そう、書かれていた
あれ?
あれ?
あれ・・・
あ、・・・れ?
夜の筈なのに、世界が白くて
困った
真っ黒の筈なのに
真っ白に塗りつぶされて
迷った
あの時の言葉
それは言葉のような箱
鍵の付いた頑丈なもの
ごめん
その先に在った物
何もない白
そして、今も・・・
ただ、そこに大きな文字で
私の言ったセリフがでかでかと
書かれていて・・・
じんわりと
世界が、歪んだ・・・
伝えていなければ
きっと
こんな顔では、旅立てなかったはずだ
あぁ、ほんと
ずるいよ
こんな逃げ方
返事の続きくらい書いておきなさいよ
馬鹿・・・
どうしようもなく
馬鹿、何だから・・・
もう一度、あの時と同じ想いの
涙が
ぽろぽろと
ぽろぽろと
零れ落ちた
by幻想師キケロw