シンジュの森 | 梟霊のブログ

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適当に詩をUPします。
評価に、興味なし
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山菜大好き
ハーブ大好き
とことん変り者なため・・・
絡み辛いこと必死
静かに、生暖かく見守ってください

シンジュの森



どうした御仁
この森に、迷ってしまったか?
なに、そう不安気な顔をなさるな
このシンジュの森はな
そう、夢
夢の中じゃ・・・
何れ醒める
それまで、そうじゃのう
御仁の話を、この老い耄れに聞かせてくれんかの
まぁ、お主が良ければ
じゃがの・・・

私は、知らぬ爺さんに
不思議と、生きて来た中を語った
嬉しいこと
悔しいこと
解らないこと
どうにもならないこと
いろいろと・・・
その内、どこから出て来たのか
質素な机と座る場所があった
気が付けば
深く落ち着きのある部屋の中にいて
外を眺めながら
楽しそうに聞く老人を
目の前に置いていた

そうか、そうか・・・
苦労かけるのう
なぁ、お主
この森を見てどう思う

楽しそうに笑う顔と
どこか悲しそうな声が
周囲の緑に向けられた
私には、別段どうという感覚はない
唯の森
そして、つい先ほどまで
恐ろしく思えた森

お主は、迷っておったのじゃ
どこまでもな・・・
この森は
先にも言うたが
シンジュの森
この緑
この樹々一本一本が人の役目を負うておる
迷うということは
己に迷うということ
この森に足を踏み入れるということは
この大地に
還りたい、と願っていること
そして、儂に合うということは
それを行った
そういうことなんじゃよ・・・

遠くを眺める老人
ゆっくりと語る言葉に
徐々に重みを掛けているように思える
実際、遠回しにされているが
大筋、間違ってはいない
私は、逃げだしたのだ
最後に途切れた記憶が
その証明である

よいか?御仁よ
知っての通り
世の中に平等は少ない
それはな、それ相応に少ないからなんじゃ
命とは、その一つ
たった一つ
当たり前のように思えてしまうほど
身近にあり
気が付かないほど
弱弱しい光
それをな?
己の吐息で消そうとは
何とも、勿体無い
人生は不平等に作られる意味を
少しだけ教えよう
退屈を忘れさせるため
努力させるため
気が付かせ、戒め、進ませるため
何もかも平等であるならば
命は、進もうとせん
我儘のまま
知らぬうちに消えてしまう
愚かで無知な、そして無垢な輝きなんじゃ
感情とは砥石のようなもの
その輝きに変化を与え
己だけの形を創りだすための
何より
他の者と削り合い、磨き合うためのな・・・

私には、この老人の話の意味は解らないが
何となく、説得されているように感じた
普段の私ならば
この声の一つ
言葉の一つさえ
聞くことも理解しようとも思わないだろう
だが、ここにきて
数時間
いや、それ以上経つだろう
不思議と、面白く
不思議と、噛み砕き心に仕舞い込む事ができた
ずっと、この場所に居たいとさえ思ったほどに

なぁ、お主・・・
この森に夜も昼も朝もない
変化と言えば
御覧なさい
あの場所を
紅く枯れてしまっているだろう
あの場所は
崩れ去り何も生えてこない
どうしてなのか解るかのう・・・
ほっ、ほっ、ほっ・・・
解らんという顔じゃな
あれはな
奪い過ぎたんじゃ
互にの・・・
そこに生まれた一つの感情
いっそ何もなければいい
それが、あれなんじゃよ
しかもあれだけに留まらん
見てみい
あれも、そこも
あっちもそうじゃ
この森を侵食し始めておる
悲しいことじゃ
痛ましいことじゃ
哀れなことじゃ・・・
良かれと思い
そうしたのじゃが
結果は、御覧の通り・・・

今までの穏やかさは、無い
本当に暗く、影を落とすように
怒れるように老人は語る
その言葉は他人を攻めるようなものではなく
自身と、その無力さに嘆いているように思えた

あぁ、長くなってしもうた
すまんすまん、長く留めてしもうて

一通り話し終えたのだろうか
不意に顔を上げてこちらに向けた
最初のころのように
優しげに微笑んでいた
私は首を横に振った
そして、尋ねた
そう、帰り道を、だ
老人は、頷き
私の背に人差し指を向けた
気が付けば
部屋も、机も無くなって
いつの間にかそこには道が在った
獣道よりも若干良いくらいの
しかし、道は道
辺りを見渡してもそれしかないところを見れば
そこが出口なのだろう
お辞儀をして
歩き始めた
森の中、振り向いても老人の姿がすっかり見えなくなったころ
ぼんやりと霞み始めた視界
美しい緑が朧気に散りだしたころ
声が聞こえた
その声は、紛れもなく私の名を呼び
必死だった
駆けだした
迷いも恐れもなく
つま先まで力を込めて・・・

その先には、現実が在った

あれから何年たっただろうか
憂鬱な気分も
苦しい時も
どことなく楽しむ私が居た
あの老人の言葉のほとんどは
記憶に埋もれて思い出せない
だが、なんとなく笑って
見守ってくれているような気がして
この人生、悪くもないと
考えるようになっていた


ここはシンジュの森
ここに来るものは大抵、迷い人
その中でも、生きて儂に会えるのは
ほんの一握り
ほとんど皆、役目を終え
枯れて初めて
訪れる事ができる場所なんじゃ
本来ならば、訪れん方がよいのじゃが・・・
もしもじゃ、生きているままにそこに立っていたなら
慌てず、目を閉じて聞いてみると、えぇ
感じてみると、ええ
森は、お主に語り掛けるじゃろうて
人生に迷ったら、風に見習え
生き様に迷ったら、水を眺めよ
暗がりに堕ちたなら、歩き出す前に火をともし
腰を下ろして考えても遅くはない
閃きがほしいと思ったら、探し始める前に暗闇を見つめてみる
温もりが欲しいと思ったのなら、光に手をかざし信じてみることじゃ
大地は、広がっておる
余程のことが無ければ踏み外さんし
消えることはない
向かう場所も握る夢も様々じゃろう
この森から眺める景色のように
綺麗でなくてもいい
完璧を目指す必要もない
ただ、見つめるんじゃ
お前さんの中に燃える命を
考えるんじゃ
その輝きの使い方を
それは、それだけは儂でも教えられんからの
本当の意味で自由なんじゃろうて
ただ・・・
己から消してしまうのは
お前さんより見ている方がつらい時もあるんじゃよ・・・
その使い方だけは
儂は、賛成しかねるがのう
まぁそれも託された上での自由
儂は、何も言わんよ



by銀翼のキケロw

何となくこの詩(物語?)を創って思いました。命の始まりは平等で、終え方は自由なんじゃないかなって。人が叫ぶものよりも単純でそこに在るものとしては、共通な議題で在り答えなのではないでしょうか。