山脈
高く
早く
唸る私の鼓動は
立ち上る雲のごとく
熱を帯びて
この身体を
頂へ運ぶ
ひょうひょうと嘲笑う風と
じっと見上げてくる岩肌に
冷や汗と情熱とがぶつかり合う
孤登の尾根
スパイクが猫の爪のように岩肌を引っ掻き
グローブがヒトデのようにそこにしっかりと張り付いた
雲と大地の境界が
50cmとない世界が目前に広がり
さえぎるものは無いとでも言うような日差しが
突き刺さる
命綱が軋む音
肩が上下に揺れる吐息と
繰り返し言い聞かせる念仏が
途切れることは無い
上がある
先がある
進む理由は
それだけ在れば十分だ
贅沢なんていらない
より
素朴に
より空腹を満たすために
単純な本能だけが
私の中をうろついた
左右に振れただけで
どちらかに転げ落ちてしまうような
険しい山脈の頂上を
どこへと無く進む私は天秤だ
片方に太陽を持ち
片方に月を携えて
一番星を後目に一点
誰よりも高い場所を踏みしめた
ただ一人
声を上げ
酒でも
自身にでもない
心地よさに酔い
大の字に
天を笑う
by幻想師キケロw