帰らない黒猫
(′・ω・)第九話、大きな黒猫、小さな黒猫(そのに)
リビングと言うところの、そふぁという椅子に横になっている。子猫は、私の腹を枕にしてすやすやと寝ている。あの日から一週間、夏休みが始まってほぼ二週間というところ。私は、しゃべる気力も無く、このくうらあと言うものが一番利いているこの場所に居ることが多くなった。そして、今、母親は買出しに出かけ、二人きり。動きたくとも動けないこの状況。はぁと溜め息を突いて、持ち上げては、こてんところばすことを繰り返している。なんだろうな、この頭が、どうにかなってしまいそうだ。
「ただいまー。」
あぁ、妹君がご帰還のようだ。でもまぁ、どうでもいいや。
「おかーさーん?あれ?居ないのかな・・・・。」
靴を放り投げたかのような音がして、とたとたと足早に近づいてくる音がした。カチリ。ドアノブが回され、ゆっくりと開かれていく。私は、それを目を細めて眺めていた。
「チッ・・・。」
隙間から、私の姿を確認した彼の妹は、あからさまに嫌な顔をして、舌を鳴らし、そっとドアを閉めた。
「フアー・・・」
その音に反応したのかどうかは判らない。チビが、目を覚ましたのは、ドアが閉められてから間も無くの事。前足を、交互に舐め。腹も舐め。顔を梳かした。起き上がれば、小さな身体を、一著前の猫のように伸ばす。小さな鼻先を、私の顔に擦り寄らせ、スンスンと臭いを嗅ぐ。そして、幾度か、顔を擦り付けてから、トン、と床上に下りた。私には、動く気力が無い。よって、暫くチビの様子を眺めていた。
チビは、そろり、そろりとドアのほうに近づいている。時折、きらきらと瞳を輝かせ、こちらを振り返る。そろり、そろりと進んでは、また振り返り、ドアの前まで進むと、チョンと座った。さてさて、何を考えているものだろう。私の黒目は、興味心身に広がって、その背を眺めた。僅かにある隙間に鼻先を押し当てて、何かを探しているようだ。ちょちょい、ちょちょいとその隙間に爪を立てている。ほほう、どうやら開けようとしているらしい。だが、ビクともしない扉に、また座る。それを、幾度か繰り返した後、ぴょんと飛び上がった。横に飛び出た取っ手に、小さな手が片方、引っ掛かる。カチン、と小さな音がすると、宙ぶらりんの子猫を抱えたまま、ドアがゆっくりと開いた。そして、そのまま、壁との間にチビを挟めこんだ。とたん。降りたのだろう。そんな感じだ。何食わぬ顔を覗かせて、一度、私のほうを見た。数秒の間止まってはいたが、またゆっくりと動き出し、リビングの外に出て行った。それから、それから、暫く後。
「いやぁあああああああああああああああああああ!?ちょっと、何してんのよこのチビ猫!!!」
落雷のような悲鳴が、昼時の静かな家に響き渡った。