帰らない黒猫
(′・ω・)第七話、のびのびとした猫(そのさん)
最後の時間、私は、あの大男の腕の中に居た。いや、不思議なことではない。暇そうに寝転がっていたところを、捕縛されたに過ぎない。まぁ、気晴らしにはちょうど良いだろうか。
目に見えなかったころ、ベースボールをいうものをやったな。慣れないせいか、どこぞの石ころのようにコロコロと転がっていたものだが。今は、腕の中から、頭だけを動かし、あの球体を眺める。走る、男女を追いかける。どこぞの組みかは知らないが、やっていることは前と変わらない。打ち、走り、笑う。はぁ、人と言うものは平和になったものだなと、溜め息を突いた。
「なんじゃ?猫も走りたいんか?」
「・・・。」(お?)
地面に下ろされた。なんだか、とてつもなく懐かしい感触に思えて、グッと身体を伸ばす。真っ黒いせいか、陽のあたる部分が暑苦しい。どれ、その言葉に甘えようか。中央を守る女の子の横に走っていった。少し距離をとり、座る。遠くから、いいなぁ、とか、可愛いとかいろいろ聞こえるが、この少女は、無言で見つめてくるだけ。
「行ったぞぉ!!」
鉄砲の乾いた音よりも、ずっと清々しい金属音が聞こえると、それよりも早く大男の声が届き、私は走り出す。さすがに、一回では取れるはずも無く、三度目の跳ね上がりを見計らい、飛びついた。上手いこと爪が引っ掛かり、抱きかかえることには成功したが、銜えることができない。コロコロと、頭と、前足で転がし、ふらふらと蛇行しながら、ほーむというところを目指したのだ。
少女は、じっとそれを見つめていたが、自分の横を過ぎるか、過ぎないかのところで私のボールを拾い上げ、グンと投げ飛ばした。走者は既に、居ない。だが、放り投げた起動にも似た球は、高らかと空を舞い、落ちていった。