聞こえる
その世界では
私は見ることができず
誰かの背に乗って
足音だけを聞いている
温もりが
腹から胸にかけて伝わってくる
何度も直し
歩き続けているのだろう
時折大きく揺れては
私の両太腿を
持ち直す
くすぐったいとか
きもちわるいとか
そんな気持ちは浮かんでこない
それよりも
ずっと
この温もりを感じていたいとさえ
この穏やかに高鳴る鼓動が
言っている様に思えた
私は、誰とも知らないものの
優しさに
甘え、寄り添っているのだろうか・・・
聞こえる
テンポの良い何かを叩く音
聞こえる
誰かと親しげに言葉を交わすその人の声
聞こえる
私自身の
申し訳ないようで
嬉しいような
なんともいえない片言の想い
時々遠くで泣いている君を
抱きしめたくて
歩いてみるのだけれども
なかなかどうして
希望のない闇に
当など存在すらしなかった
ただ転んで
駆け寄ってきた君へ
しがみ付く
あぁ、慰めてあげたいのに
もどかしさで
この唇を噛み切ってしまうほうが早いのだろうな・・・
無意識に零れた涙に
片方の耳から
大きな鼓動が聞こえてきた
それは確かに
包まれているときにしか聞こえない
音だった・・・
by幻想師キケロw