帰らない黒猫 | 梟霊のブログ

梟霊のブログ

適当に詩をUPします。
評価に、興味なし
フクロウ大好き
きのこ大好き
山菜大好き
ハーブ大好き
とことん変り者なため・・・
絡み辛いこと必死
静かに、生暖かく見守ってください

帰らない黒猫
(′・ω・)第六話、猫に戻った猫(そのろく)
 
 
 
 
 私が、どこぞの雲丹のようになってまもなく、二人の女子に容赦なく体中を絞られた。どうも、最近の子供は手加減と言うものを知らないらしく、甲高い笑い声を響かせて少し鼻を突く臭いのする布切れをゴシゴシと、ゴシゴシと。おかげで私の自慢の毛並み全て削がれてしまうのではないかと、心の奥底から心配してしまった。だが、それにも及ばす、今はそのタオルに包まれて、メグと呼ばれた女子の腕の中に居る。しかし何だ。さっきは心地よかったはずなのだが、今は胸苦しく、呼吸がどうもままならない。時折、水面を泳ぐような仕草で息継ぎしなければ、窒息死してしまう。まいったなと、少し顔を中央に寄せて、考え込んだ。
 そうこうしているうちに、目の前に扉が現れ、開けられ、そして、小柄で物静かそうな歳経た老婆がちょこんとそこに居たのだ。
「おや?どうしたんだい?」
「いえ、怪我とかそういうのじゃないんですけど・・・、この子がこの猫を助けようとプールに飛び込んでしまいまして。その、ジャージとかないですかね?」
「あぁ~、さっきのタオルはそれなのかい。」
「えぇ、先生。すいません。」
「いや。いいよ。どれ、服のサイズをいいな。」
「ほらメグ。」
「えと・・・、その・・・。Lサイズってありますか?」
老婆の顔は、ゆっくりと目を丸くしていった。やがて、私のほうを見つめ何かに納得したようにわかったよと言った。
「まったく、今の子供はよく成長するねぇ~。ほらその猫こっちによこしな。外に捨てとくから。」
「え?」
「野良なんだろう?」
「あのう、多分違うと思うんですけど・・・。」
老婆の二つの繭が上下にずれた。
「はて・・・、じゃあなんだって言うんだい。誰かがペット持ち込んだってのかい?」
「あぁ~それなら・・・。」
もう一人の女子が、よくもまぁ喋る事。一言、アイツの名を出せば済むのに、ああでもない、こうでもないと。あきれ果てて、私は、メグと呼ばれた女子の腕から飛び出した。そして、とことこともう一人、たしかりっちゃんと呼ばれた女子へ近づいて、一爪浴びせてやった。それも、故意にやったように見せず、じゃれ付くようにカリッと。
「いったぁ~!!ちょっとなにぃ~?」
「アッハッハッハッハ、ご主人のこと悪く言われて腹でも立ったのかねぇ?」
「アハハ・・・、まさかぁ~?」
「りっちゃん、猫ちゃんに謝ったら?」
「え~・・・。」
人に謝ることを知らないのかと、見下ろす彼女に、にかりと牙を見せてやった。
「はいはい、悪かったわよう。」
りっちゃんと呼ばれた女子は、屈んで私の頭をぽんぽんと優しくたたきながら謝った。私は、ふふんと得意げになり、ピンと尾を立てて老婆のほうへと歩み寄った。そして老婆の直ぐ後ろで腰を下ろし、乱れた毛並みを整え始めた。
「おやおや、強かな猫だこと。ほら、有ったよ。」
「あ、ありがとうございます。」
「さっさと着替えて、教室戻りな。授業はもう始まってんだから。」
「はぁ~い。」
「あ、先生?」
「なんだい。」
「その猫ちゃん、よろしくお願いします。」
「はいはい、解ったよ。心配しなさんな。」
「ありがとうございます。」
その言葉を聞くと、そそくさと着替えて、この部屋から出て行った。それから、お昼になるまで、私は、ここでうろうろと時間を潰していた。