ブリキの思い出
モノクロ写真に
何食わぬ顔で写っていた
その人形は
昔々、それはもう
幼い頃に、手をつないでいた
僕の大切なお友達である
その頃の楽しみといえば
おばあちゃんの創る
真っ赤なトマトと
キンキンに冷えたきゅうりとスイカを
彼を抱えたまま頬張ることぐらい
だって、喋らないから
相手にもならず
かと言って
近所に友達がいるわけでもない
だから、ついでに遊んで
一緒に食べるのだ
いつだったか・・・
食べれないことを知っていたはずなのに
通らない口にキビを押し込んだこともあったかな?
結構笑われたっけ
そして、どう言い訳したかな・・・
うむ、さすがに覚えていないなぁ
ただ、今思えば、かなり恥ずかしいことを大真面目で言った
気がするってことだけは確かだ
でも、、、
朝なのに、向の空が夕焼けのように赤くなった
大人たちに慌ただしく引かれ
泣く泣く家を飛び出したあの日
遠く山間の叔父の家へ
気がついたとき
しっかりと握っていたはずの
彼の姿はなく
一方の腕のみが
ブラリと力なく僕の手の中にあった
泣いた、泣いた
それはもう
大声で
帰ると聞き分けなく
幾度駆け出したことだろう
そのあとには必ず、拳骨が脳天から全身を貫いて
また泣いたなぁ
暫くして、平気にはなったけど
故郷に帰ってまたびっくり
あんなにあった家がまるっきり無くなって
ずっと向の山々が見えているのだもの
たまげたなぁ、そりゃ・・・
何が起こったのかなんて
理解できるわけでもなし
ひたすらに
じいちゃん、ばあちゃんの後ろにくっついて
ここだっけな?
ここだったかね?
そんな日々を過ごしたよ
あれから―
本当に、どれくらいたったのだろうかねぇ
幼子から
青年になり
大人になって
もう、すっかり忘れていたよ
彼のこと
でもまぁ、見つかってよかったよ
こんなところに隠れていたとは
本当にもう、なんていうのかな
おかえりなさいだな
こんなに薄っぺらになってさえいなきゃもっといいのだがな
まぁ、この年になってわがまま言ったってしょうがないし
我慢しよう
最後にこうして
再び会えたのだから・・・
さぁ、さぁ、今度は何して遊ぼうか・・・
夢の中だけになるだろうが
年寄り相手で悪いが
久々に
遊ぼうではないか
友よ!
byいつかどこかのキケロw