幻想の旅人11
意識を暗い海のそこに沈めるように
深く
深く
潜らせていく
気がついたら
どこまでも続く
空の蒼原に立っていた
本当の空に
鏡のような大地に映し出された
逆さまの空
音も無く
風もなく
白と青
そして、僕だけの世界
ただ、僕の足元から
鼓動に合わせるかのような
波紋がゆらゆらと
広がっていた
トン・・・
トン・・・
ゆっくりと
何かを壊さないように
歩き始めた
でも、鼓動の波紋より
大きな波紋が出来上がる
あぁ・・・
またやった
あぁ・・・
またか・・・
心のどこかでは
この静寂なる美しき世界を
歪に揺らして楽しんでいた
音も風もない
けれど
上も下も雲だけは
ゆっくりと
時を刻み続ける
ゆったりと
ゆったりと
マイペースに形を変えながら
どこかへ消えていく
僕も、こんなふうに人生を歩み
こんなふうに
跡形もなく消えていくのだろうか
何となく
そう思ってしまった
急に悲しさがこころに満ちてくる
この空と同じように・・・
空っぽになってしまうのか・・・
広い世界で
ポツリとつぶやいた
何か音がする
さっきまで何もなかったのに
サラサラとせせらぎのような
木々が揺れるような
涼し気な音・・・
振り向いたその先に
ひっそりと佇む
枯れ木がいた
その上に白い翼を乗せて・・・・
静かに微笑む者
何か近づきたいようで
近づけないような
尊さが輝いている
声すらも
かけられない
もし・・・
仮にかけてしまったなら
その白い純白が一瞬で燃え尽きてしまいそうだから
僕は、ただ微笑む君へ
すこし困った笑顔を見せるしかなかった
恥ずかしそうに
いったい僕は、どこまで旅をしてきているのだろう
様々な旅路が蘇る
それでも
はっきりとした君を見るのは初めてだった・・・
時々
目の前から消える
すると僕の後ろに居て
今度は枯れ木に少し緑色が見え始める
また消える
すると
青々と大きな葉を広げ
君を隠そう・・・
いや守るように包んでいる
また消える
すると
色取りに染まる葉が花のよう
そして
その鮮やかな色が
白い羽に当てられて
キラキラと輝いている
また消えた・・・
今度は
元の枯れ木・・・
だけど君がいない
二、三枚ふわりゆらりと揺れる羽が
降りてきて
大地を揺らした・・・
その下を見たとき
揺れる波紋の中に君がいて
僕を抱きしめる・・・
でも
実際に顔を上げると
どこにも君がいない
鏡の中にいる僕だけを
抱きしめている
また
何かを語りかけているようだった
幸せそうな顔で・・・
何となくだけど
背中が暖かいような・・・・
気のせいだよね・・・
その日の朝は
いつもの朝日が差し込んで来なかった
でも
心の中には
普段見る光の数倍の輝きを持つ
微笑みが
僕を照らしていた・・・