無音
初夏の夕焼けに
二人の影が道をゆく
カラカラと自転車の乾いた音を
どこまでも
響かせて
僕が、見上げた空は
どこまでも高く
君との距離のように思えた
初めて
告白したその日から
今こうして
歩いている
でも、まだ会話がない
夕焼けのせいだろうか
振り向いた時の君の顔は
赤く染まり
スラリと伸びた綺麗な髪に隠れて
表情がどうなっているかは
わからない
僕は、何となく鷹になった気分だ
首に下げた
ヘッドホンの左右から
流れてくるメロディーに合わせるかのように
あの空の向こうで
一羽、くるくると旋回していた
どうしたらいい
どうすればいい
自転車のハンドルを強く握り締め
僕は、考えた
話そうか
手をつなごうか
抱き・・・よせる?
わからない
無音の世界が
僕らの間に横たわり
どうしても退いてくれない
虚しさだけがひたすらに時間を消費する
私の前を
大きな背中を左右に揺らし
足早に歩いている
君の言葉に驚いて
君の言葉を信じたあの日
その日から
何度無言で帰っているのだろう
話したくても
手をつなぎたくても
時折振り向いてくる
君の顔が
夕日でキラキラと眩しくて
こころが踊る
大きく反り返る
変な顔してないかな?
変な表情してないかな?
不安で前が見れない
今、私と地面との
そんな距離しかないのに
とても遠く感じてしまう
どうしよう
どうしたらいい?
目の前に横たわる
無音の世界がとても
もどかしい
ほんの一枚しかない
紙のようなものなのに
とても硬い鉄のように思えてしまう・・・
少年が立ち止まり
舞い上がった
たんぽぽの綿毛を指さした
キョトンとした表情を
少女は少年に見せた
二人とも
赤く染まりうつむいた
でも・・・
くすくすと笑いがこみ上げて
少年少女は
大空へ向かって
笑い声を響かせた
周囲には他人がひしめいている
しかし
二人には聞こえていない
どんな音で邪魔をしようとしても
さっきまで邪魔をしていた無音が
ずっしりと二人を守っているからだ・・・