英雄
その男は言った
私を英雄と呼ばないでください
その男は言った
私を英雄と語らないでください
私は、ただこの小さな家と家族がいる
一人の人間なのだ
その男が
剣を天にかざせば
歓声が沸き起こり
その男が動けば
敵は怖気づいた
人々は、こぞって英雄と持ち上げる
だが、男は言う
私を英雄と呼ばないでください
私は、人殺しであり
人を他者に殺させている
咎人なのだから
その男が
手を天にかざせば
子供たちの目がらんらんと輝き
その男が大地に足を着ければ
若者たちが祝福する
だが、男は言う
私を英雄と語らないでください
私の後を追って
いくつもの未来が目の前で消えていきました
私は、かの一人すら救えない
小さな人間なのだから
寂しげな背中は
小さくも見え
大きくも見える
どこか遠くを見詰める
その瞳は
それまでの道を振り返っているのだろう
傷だらけの腕は
守るべきもののために
太くがっしりとした足は
城壁のように揺るがず
その男の
信念を映しているのだろう
その男は言った
私を・・・
【英雄】と
たたえないでください・・・と