鳴かぬ八咫烏が身を焦がす | エンパス森ふくろうの独り言

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自分はエンパスだったんだ!と今更気がついたふくろうの独り言

この八咫烏シリーズの外伝は、作者が本作中に入れられなかったというサイドストーリーをまとめてあります。

この6作品は八咫烏達の恋の物語。



「しのぶひと」では、

身分違いだから叶わぬ恋とわかっていても、遠くから思うだけで良いと思っていた男はこう言います。


「嫌われても、疎まれても、せめて、あの女(ひと)が少しでも幸せになって欲しいと願うことだけは、許されると思ったんだ」


健気で一途な恋をした男、澄尾はその後、本編の猿との戦争で、顔も元がわからぬくらい火傷で覆われ、

左の腕と左足を失う瀕死の重傷を負います。

そんな彼を必死に看病した人は彼の思い女だったと知り、最後に収録されている「わらうひと」でその顛末が明かされます。

彼がどれだけこの恋に必死だったか、わかりますよ。



悲しかったのは、「まつばちりて」


まつはその生まれから女であることを捨て、男として宮中に上がるか、女郎になるかの選択を迫られます。

男として「落女」という身分で皇后の警備に当たることになりますが、頭も良かった彼女は、今上陛下の言葉を文字に起こす職に就くことになりました。参考にと見せられた中にあった一つの文に彼女は、「やわらかで、精緻なのに、華やか」な書き付けを見つけ、

この文を書いた人はどんなに教養のある素晴らしい男性であろうかと思ったことでした。

ところがいざ、その男忍熊に会ってみたら、無骨で落女を頭から馬鹿にする醜男❗️

当然ながら顔を合わせばぶつかり合うばかりの仲でしたが、そこからあれやこれやあって、

まつは、忍熊と恋愛関係にあるという誤解から任務を解かれ、誤解が晴れた時、彼女は既に処刑されていました。

死の前にまつは卵を産み、左遷されていた忍熊のところにその卵を届けた女官は、実はまつのおかげで立場を救われたといい、

まつはこの卵は乱暴されたために出来たのではなく、心底愛し合った結果だと皇后に言い放ったために処刑されたと知り、

それを知って号泣する男。

お互いのためにと心とは反対の言動ばかりしていた男女の恋は悲恋に終わりました。


私にはこの話が1番泣けました。

反発し合う男女が恋に落ち、その恋が成就するまで、お互いに恋していることを知らなかった話はよくあるけれど、

大抵はハッピーエンドで終わります。でも、この作者にかかったら、やはり一筋縄では行かなかったのでした。



自分たちの世界を守ろうと懸命な八咫烏達の戦闘の合間にも、こんな恋の話があって良かったです。

この外伝のあとは辛い話や愕然とする話が続きますから🥲