『果てしなき多元宇宙』/筒井康隆 | こだわりのつっこみ

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  読者諸君と同じ、この世界に住んでいた暢子も、やはり、別の宇宙へ、おしこまれてしまった。ほんの少しはなれた、タテ糸の中へ!
 だが、その世界は、あまりにも、もとの世界と、よく似ていたため、暢子は、しばらくのあいだは、その世界の異常さに、気がつかなかった。
 暢子のやってきた世界――そこは暢子が、内心、こうあってほしいと望んでいた世界だった。事故が起こったときに、暢子が願っていた世界が、もとの世界からおし出された暢子を、いちばん先に、受けいれてくれたのである。
(p206より)

 
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今回は、『時をかける少女』に所収されていた短編、果てしなき多元宇宙を紹介します。


早速
あらすじです。

S高の生徒である暢子は、いつもM高の不良高校生3人組から嫌がらせをされていました。
級友である史郎と2人でいるときもその3人組にあってしまいます。
しかし、史郎は何もせず、無抵抗のまま彼らに押し飛ばされてしまいます。

暢子はなんだか釈然としません。
怒らず、精神的なショックも受けていない史郎の様子に驚くばかりか、男らしくない彼に対して軽蔑の気持ちさえも抱くのです。
そこで、暢子は史郎に電話をすることに。
しかし、暢子が電話をしようとすると体がふらっとぐらつきました。

変わって3921年の東京。
16歳の女性科学者ノブはヴェラトロンという装置を起動させます。
しかし、事故が起こり爆発。
ヴェラトロン大爆発は、あたりの時空間連続体を引っ掻き回し、多元宇宙のノブの同時存在を入れ替えてしまいます。



では以下はネタバレ含むので、いやな方は見ないで下さい。











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~1回目 2012.1.5~

では、あらすじの続きを。



さて、暢子の住む世界。
めまいのあと、暢子が史郎に電話をかけようとすると、なんと電話のダイヤルが5つしかありません。
さらに目は二重となっており、弾けないピアノには黒鍵がありません。
学校へ行っても苦手な数学は簡単。
なんとなく、暢子は気づき始めます。
この世界は自分がもともといた世界ではなく、別の世界だということに。
その世界は、自分が願ったものを集められてつくられているものだったのです。

そんなことを考えていた暢子は学校が終わると史郎と家に帰ることにします。
さて、やはり不良高校生が彼らを待っていました。
史郎はこの間は何もしなかったのに、今回は違いました。
不良高校生を半殺しにしてしまうくらいの勢いで彼らに殴りかかったのです。
暢子はそんな史郎を見て、やはりもとの史郎がよい、元の世界に戻りたいと強く願います。
するとまたぼんやりとしてきて・・・

女性科学者のノブは、別世界に飛ばされても科学者として別のヴェラトロンを作り上げました。
そして装置を起動すると・・・成功。
ノブは元の世界に戻れました。
しかし、実際に戻れたのはノブだけ。
暢子や別の人々は元の世界には戻れなかったのです。

ふと気がついた暢子は、元の世界に戻ったと勘違いをします。
しかし、その場には先ほど殴り合っていた史郎も、不良高校生もいません。
また別の世界に来てしまった、そう考えた暢子は、自分は一体誰なのかという思いを抱きつつ鏡を覗きます。
すると、そこには別人の姿が。化粧をして二重まぶたの瞳。
呆気にとられていると、不良高校生がなよなよと近づいてきました。
彼らは、暢子のサインが欲しいと言うのです。
なんと暢子は、沢田のぶ子というタレントになっていたのです。

不良高校生や、史郎、クラスメートなどに追いかけられる暢子。
元の世界に戻して欲しいと悲痛の叫びをあげるのでした。


さて、感想です。

なーんかもっと大きな話になるかと思いきや・・・・・・という感じですガーン

果たして暢子は元の世界に戻れるのでしょうか。。。

というか、
ヴェラトロンを使ったのにもかかわらず、暢子や別の人々は元の世界には戻れなかったとありましたが、しかし、暢子以外の別の人々が出てこないために、あくまでも暢子のみが別世界に移動してしまった感が否めず、そうするとあくまでも暢子を中心とした暢子だけの話に終わってしまい、SFとしてはどうなのか・・・と思ってしまいました。
 

総合評価:★☆
読みやすさ:★★★
キャラクター:★★
読み返したい度: