幅広きクラシックの世界(2) | こだわりのつっこみ

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さて、今回は前回の予告どおり、声楽曲について、どのような形態があるかを紹介したいと思います。(YouTubeさん、お世話になります。以下、オレンジをクリックしていただくと、実際の演奏に飛びます)。
声が主役の曲は声楽曲といいましたが、声楽曲の方はちと厄介です。

というのも、声楽曲は歌う人の人数によって独唱、重唱、合唱に分かれます。

独唱はその名の通り、一人で歌うこと。
重唱は何人かでハモリながら歌うこと。
合唱は大人数で歌うこと。
ここまでは簡単。

しかし、声楽曲は、器楽曲とは違い、人数の多さでジャンルを決めることはしないのです。
むしろ、その歌が、どんな目的をもって作られたのか?ということで決まるのです。

なぜかというと、器楽曲は、純粋に、作り上げられた音楽を楽しむ、もしくはその演奏者の技術を楽しむ、という目的で作られることがほとんどなのですが、
声楽曲の場合、上記の目的以外に

①映画などのように、ある文学作品や詩をもとに、ドラマを表現する。
②宗教の分かりにくいものを音楽と歌で分かりやすく表現する。

という目的があるからです。

なので、ジャンル分けもそれに応じて行うことにします。

まず、①ドラマを表現する、というものとして、
オペラ劇付随音楽歌曲、というものがあります。


まずは、オペラです。
こちらは有名なのでなんとなくイメージは出来ると思いますが、台本をもとにして、舞台装置(大道具・小道具・照明・衣装など)を完備し、オーケストラの伴奏に乗せて、独唱、重唱、合唱なんでもありでドラマを作り上げる、というものです。ということで音楽的要素以外のものも多く含まれることから、「総合芸術」とよく言われます。
この作品 はその中でも代表といえるでしょう(ワーグナー作曲『ニーベルングの指輪』の「ヴァルキューレ」中の第3幕の始まりです)
もっと見てみたいという方は、名作映画『アマデウス』をご覧いただくと、いかにオペラを作曲すること、演奏することが大変なことか分かると思います。


次に、劇付随音楽
一言で言えば、オペラの縮小版とでもいいましょうか。
オペラは規模が大きく、金がかかるというので、音楽の方が重視された形態ともいえると思います。
こちらは、その時代に有名だった文学者や詩人の作品をもとに音楽が付けられていて、例えばこの曲 はシェークスピアの作品を基にして作られています(メンデルスゾーン作曲『夏の夜の夢』からです。歌の部分は4:40あたりから。)


さらに歌曲
こちらは前に2つ紹介したオペラ、劇付随音楽と比べると比較的小規模で、
多くはピアノを伴奏として独唱という形が多く、作品数としてもかなり多いです。
例えばこの曲 は有名ではありませんがいかがでしょう(ヴォーン=ウィリアムズの残した歌曲集『生命の家』より「沈黙の午後」です。)



さて、お次は②宗教的なものを表現する
というパターンです。

クラシック音楽は、聖歌のような形から次第に発展したという側面があり、それゆえ歴史的にも古いものがあります。
だから必然的にキリスト教の聖書を土台として、その印象的なシーンを音楽にしたり、名句が書かれている部分を歌にするということになります。
これら宗教曲はさらに細かく分かれており、たとえば日常の礼拝などで歌われたカンタータや、厳かな礼拝時に歌われたミサ、さらに死者のためのミサ曲となるレクイエム、ドラマチックに宗教的な場面を歌い上げるオラトリオなどがあります。

まずはカンタータ
もともとカンタータとは伴奏がついた歌全般を言うのですが、宗教的な意味で言えば、日常の礼拝の際に歌われるもので、特徴的なことはプロの歌手だけでなく、一般の礼拝者も歌えるように作られたということがあります。
なので芸術性はともかく、親しみやすいということがその第一条件なのです。
さて、この歌 は聴いたことがある人もいるかもしれません(バッハ作曲カンタータ第140番から、コラールの部分です)
さらに意外ながらも日本からもこの歌 を紹介します(「大地讃頌」として有名ですが、この歌は佐藤眞作曲のカンタータ『土の歌』の1曲なのです)


次にミサ
こちらはなんとなく、格式高く、厳かな感じがします。大雑把に言えば、日常ではなく特別な儀式の際に演奏されるものです。
あまり有名な曲はありませんが、この歌 は割とメジャーなほうです(バッハ作曲『ミサ曲 ロ短調』からキリエの一部分。)


さらにレクイエム
ミサの中でも、「鎮魂歌」と訳されるように、亡くなった人の魂の安らかなる事を神に願う、という一連の歌です。ですから、どこか荘厳で悲しみに満ちた感じもするけれど、最後は心休まる、というような印象を受ける歌が多いです。
先ほど紹介した映画『アマデウス』の中でもレクイエムはクライマックスとして登場しますが、この歌 もなかなか美的であります(フォーレ作曲の『レクイエム』から3曲目「サンクトゥス」)。


最後にオラトリオです。
こちらはオペラのように、ある台本(聖書など)を基にして、非常に物語性に富んだ声楽曲となっているのが特徴です。
しかし、オペラと違うところは、演劇スタイルではなく、衣装や演技も必要ありません。
有名なところとしては、この歌 があります(ヘンデル作曲『メサイア』から「ハレルヤコーラス」として有名な部分)



さて、一応クラシックのジャンル分けは済みました。
しかし、概してクラシックをあまり聞いてなかった人にとっては、声楽曲はなんとなく腰を据えにくいと思います。
日本人の多くはキリスト教徒ではないのでそもそも馴染みが薄かったり、外国語で歌われているのでなんとなくその迫力を十分楽しめない、という面があるからです。
実際、私もあまり声楽曲にはまだ踏み出せていませんガーン
中高生向けの合唱曲は割と豊富だと思うのですが、日本語でのオペラや宗教曲がもっともっと増えてくれればなぁと思うのです。

私がもっぱら関心があるのは器楽曲。さらにその中でもオーケストラが奏でる管弦楽曲です。
以前書いたこともありますが、最初に好きになったクラシックの曲が組曲「展覧会の絵」ですから。
なので、次回からはオーケストラの魅力なんかを語れればいいかなぁと思います。